■fwf4×4
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■461.fwf4×4/901023/三原町八木寺内
おそろしいことにもう三十年以上もまえ,
これはオリンパスペンEE-3で
農民車を撮影しはじめたころのもの。
何度か書いているが、一日に三十六枚撮りフィルム二本を
使っているような状況で、ハーフカメラだから計七十二枚ほどを撮ったことになる。
ま、いまのスマホなんかで撮っていたらもっと数が増しただろうが、当時は当然金がかかる。
フィルム現像がえーと、¥1500くらい×2、プリント代が一枚¥35くらい…計¥5520-…。
もっと高かったかなあ。
加えてフィルムがモノによっては千円ちかくした。写真屋で一度に八千円払った記憶もある。
だから一枚にかける情念が強烈だった。
それでも通常一枚の面積に二枚撮影できるハーフサイズカメラは、
リーズナブルな写真機ではあったので、
どんどん撮りまくる独身で実家住まいの近野だった。
いまとはおおちがいである。
その写真はもはや色褪せと損傷が激しいのだ。
淡路島でよく見るバベ(ウバメガシ)の垣根がまだ剪定されていない農家の前、
前後に同じタイヤを履いた小さなfwf4×4は、トレーラーを曳いていた。
状態はいいものの年季が入っていて、
シートは運転席も助手席も肥料袋。
車体に比較して大きなエンジンを搭載、迫力がある。
下部のサスペンションも狭い車幅のなかにみっちり詰まっている印象だ。
ハンドル軸をななめにするスペースもなかったのか、垂直に近い。
現場は平野部で狭いところではなかったが、まだまだ農民車が
そう大きくない頃だったのだろう。
この小さな車体にでかいエンジンを積んでいるのに、
前輪に荷重がかかっている気配がなく、キャンバー角がはっきりとわかるくらいだ。
一番後ろに積載状態のトレーラーがくっついているので、前が浮き気味になるのだろう。
トレーラーは当然に地元鉄工所の手作りだ。その上には
自走式の脱穀機が載っている。最近は刈り取りから脱穀・袋詰めまでやるようなコンバインが主流。
脱穀のみで見なくなった機械だが、もっと昔は農民車から動力を取り出して動かす、
可搬式脱穀機もあった。そのまた昔は足踏み脱穀機
……話がそれた。この手の自走式農機は、だいたい本体に対してクローラーが
小さくて貧弱だ。圃場現場での機動を主に設計されているので、保管場所から
圃場までの行程は、どうにも時間がかかりすぎる。そこで
トレーラーというわけだ。わけても農民車は、市販車よりも牽引装置の改造・取り付けが
ぐっと簡単になる。写真の農民車も、牽引装置にかくれる形でナンバープレートがあるので、
やはり後付けだと思われる。
トレーラーのタイヤは、地面から荷台に上げるためにかなり小径のもの。
そしてそのための鉄製のあゆみ板が、クローラーの前に置いてある。
これもトレーラーと同じく手作りの鉄製だ。
いまはこんなのも、軽いアルミ製が市販されている。
しかし、積み込みと積み下ろし時には要注意で、一本軸の車輪で天秤となってしまい、
荷台が大きく傾くことがある。トレーラーの後端と地面の間に、角材のような
「かいもの」をしていないと……。
■462.
積んでからも油断がならない。
特に写真の個体は、車軸上に重心がないと前か後ろに傾く。
後ろにひっくり返るよりは前ならいいだろうと前に置くと、一か所しかない
接続部に負担がかかり、破損する危険もある。だったら二軸四輪にすればいいのだが、
祇園祭の山鉾巡幸のごとく地面を荒らしてしまうし、小回りが効かなくなって高価にもなる。
機械ともいえない、こんな単純な道具といえども難しいものだ。
それならばと農民車へ直接に積めればいいのだが、ただでさえ荷台の高い農民車。
重心が高すぎて危険というより無茶そのものだ。
だいたい写真の農民車だとタイヤハウスが邪魔になって積みようがない…。
その役割は、やはり2トンクラスの市販トラックか、トレーラーなのでは
ないだろうか。
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