■479.fwr4×2/910324/洲本市中川原町安坂





プリントされた印画紙の裏には、日付とただ「ヤツサカ」とメモ書きされていた。
カタカナで簡潔に記された地名は、撮影場所にあった電柱にある表示から記録したものだが、
以前、どこかに書いたように電柱表示は規則性がなく、しかも正確ではない。
たしか撮ったのは洲本市のはずだが、ヤツサカという地名はどう探してもなかった。
自分のうすくなった記憶を辿ってネットの地図を探していると、「安坂」の地名が見つかって、
ああそうだ、このへんだった。となんとか思い出すことができた。
ヤツサカではなく、ヤスサカだったのだ。
やはり電柱表示は信用できない。






                                      ■480.




荷台には、農薬散布セット一式。
現在では滅多に見なくなった動力ポンプ(リモコンでもラジコンでもない)と、
旧式なホースリール、それに小さめのポリタンク。いまのタンクはこの四倍くらいはある。
ポンプもリールと一体化して、繰り出すのも巻き取るのも遠隔操作できる。
いまから三十四年前、農薬散布もずっと苦労していたのだ。





                                     ■481.




ナンバープレートはべこべこになっていて、番号は加工するまでもなく消えかかっている。
ほかは目立った傷もないのに、ナンバーだけがどうしてこんなに損傷するのか、不思議だ。
よく見ると、荷台の周囲には木製の側板を取り付けるための四角い鋼材が
溶接されている。ということは、当初は木製側板の支柱を抜き差しして、
脱着していたのかもしれない。それが不便で、ヒンジのついた鉄製のアオリ板に
改良されたようだ。確かにヒンジ式アオリは便利だが、これだけの長尺ものは
予想以上に重いシロモノとなっただろう。

荷台下のエンジンは、土埃とオイルと排気で、どこから見ても焦げ茶色一色になっている。
前の写真480.をもらうとみてもらうと、そのエンジン横に見慣れない赤い部品があるが、
場所からいって排気用のマフラーだろうか?
それにしては汚れがうすいが、どうなんだろう。

こうしてみると、ナンバープレートが緑色を保っているのも不思議。
もう少しよく観察しておけばよかったが、この頃はとにかく
数を稼ぐのに汲々としていた。





                                     ■482.




鉄のアオリは、かなり丁寧な溶接がなされているが、角を丸く削るという
安全対策は不十分ではないか。乗り降り時に脛を引っ掛けるとかなり痛そう。
でもアオリを固定するレバーの先端は、野球のバットのように握りに留めがある。
製造者による加工か、それともこういう丸棒があるのだろうか?

木の床板から出たサイドブレーキは、そのスリットからして引かれてはいない。
ブレーキの貼りつき予防のためか。
表皮の破れたシートの下には、なにかのケーブルが床下へと続いている。
車体後部までのびるスロットルレバーだろうか。基部の突き出たL字アングルも
脛をケガしそうで怖い。椅子に突起物なんかつけるべきではない。

何十年も前の写真からでも、新たに気がつくところはたくさんある。
しかしそれで謎が増えていくこともよくある。
やはり実物をじっくり観察しておけばよかった。





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fwr4×2
……………………………………………………………………………………………………No.10