■caf4×2
荷台に消毒液のタンク・コンプレッサー・ホース等を積みこんだこの農民車の顔は、かなり強烈な第一印象を与えてくれる。私などは一発で惚れ込んでしまった。
その要因は、実にボンネットである。この七つもの面で構成されたあまりに手間のかかりそうな工作物は、それだけで何か異様な雰囲気を周囲に出している。
前下部の切り欠き方などは、一体そこまでやることがあるのかと疑問を感じざるをえない。ここは一直線に切り取ってもなんら支障はないだろう。さらに参るのは、
ボンネットそのものが前後に二分されることである。おそらくエアクリーナーをかわすために採られた措置だろうが、まったく頭の下がる配慮である。圧巻は
わざわざこの複雑な構成物に、ヘッドライトのために穴をあけたことである。ライトと穴の位置あわせには非常に苦労したに違いない。要は、ライトなどはボンネットの上か
横かに取り付ければよいのだ。この場所に取り付けねばならない、どんな理由があったのだろう。私は、これは製作した職人の美的感覚がそうさせたのだ、とあえて
考える。もっとも、ボンネットのそとに取り付けるということが思いつかなかったフシもあるが………。
このボンネットは、もっと単純に作ることができる。しかし、製作者はこうせずにはおれなかったのだろう。そのこだわりのために、私はこのすばらしい顔に
接することができたのだ。実際、もっと単純な形のボンネットを持ったcaf4×2もあるが、残念にもその美しさは劣っている。
caf形式の農民車は今のところ(99年11月)三十数台しかない。誰か実車を保存してくれないかと真剣に考えてしまう。