■452.cwf4×2/910720/南淡町賀集福井







三十年前のハーフサイズ写真だが、この七月二十日という当日に私は二十四枚撮りフィルムを
三本も使っている。ハーフなので、24×2×3=144枚もの写真…むろん、ほぼすべて
農民車を撮影しているわけだ。
(フィルムは1.・2枚なら余分に写せるので、実際はもう少し多い)
スマホ全盛の現代ではそう珍しいことでもないだろうが、当時は現像代とプリント代がかかった。
記憶のかなたを巡ると、フィルム・現像・プリントを合計して、一本あたり四千円くらいだったと思う。
独身で比較的金があったとはいえ、一日で一万円以上使っている。
そんな贅沢を、たびたびしていた。

「いま撮っておかないと、どんどん消えて行ってしまう」

という危機感もあったことは確かで、もう夢中だったのだ。
いまでもその危機感はあるのだが、残念なことに資金力は暴落している。
所帯もちとはそういうものだ。


さて、二台の農民車が写っているが、右側のはちょっとおいておく。
右のも、なかなか手の込んだフロントグリルが魅力的だが、すぐ前に一輪車が
置いてあってよく見えない。
いくら使命感に燃えていても、こうしたものをどけられなかった。
今回は左側のシンプルな顔をした農民車を取り上げる。


直角に構成された二面だけでエンジンカバーとし、妙な穴がふたつ開いている。
よく見ると、二つの穴の両横にも、小さな穴が二つずつ開いている。
なにかの廃品を流用したものだろうか。
ラジエーターのすぐ前にこんな板を置いては冷却の邪魔になるはずだが、
ご心配にはおよばない。ラジエーターは真横を向いているのだった。






                            ■453.



               

鉄板は、正確にいうと二面だけでは強度不足のようで、補強用に
横側が数センチ折られている。上面には一個の単純なライト、その奥には銀色の箱のような
ものがネジ留めで構成されているようだ。この箱の中にはなにかがある。しかし
それを確認した記憶がないので、なにかは不明。
そして、エアクリーナーのために上面は一部切り欠かれている。
左側に立っているのは、もしかしてラジオアンテナだろうか。
下側には排気管とマフラー。不整地を走行中はもっとも損傷しやすいこの場所に、
マフラーを据える勇気。さらに高温の排気管がむき出しとなった左の角。
この直截的な造形が農民車の醍醐味だ。
なぜか右側にだけ方向指示器のようなランプがあるが、こんな
こみいった場所では対向車は視認がきわめてできにくいだろう。

座席の背もたれは、昔のパイプ椅子の座面かもしれない。
その右上のほうに、なぜだかルームミラーが取り付けられている。
角度的に、まったく意味のない代物に見えるが、真に実用車である農民車には、
不必要な部品がつくことが稀だ。このミラーにも、深い意味があるに違いない。
私には見当もつかない何かが……。

当時はむろん知らなかったが、のちのCGアニメ、「ベイマックス」のような
顔ではある。あれよりももっと、何も考えていない感じだが……。









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■cwf4×2
………………………………………………………………………………………………………………No.10