■455.cwf4×4/910420/五色町都志角川





cwfの農民車という形式は、水冷化された市販車エンジン……空冷エンジンと比べて、
どちらかというと黎明期を過ぎて完成度がたかくなる時期のもので、試行錯誤や
経験不足からくる不完全さが解消されてくる。
農業という実用からはそうであってしかるべきだが、近野個人としては
面白みにかけてきて、撮影対象としてもぞんざいになってくる。
この撮影時期はもはや三十年前の取材をはじめたばかりのころ。
たとえ興味が薄くとも、一台でも資料を増やすべく、どんどん数を増やして
いった時期だ。いまでは、よく見る形のcwf4×4はフィルムの節約対象となり、撮影しても
練った角度を一枚のみ、ということも多いが、このころは角度を変えて三枚も撮っていた。
そう、これはハーフサイズカメラの写真。
同じフィルムで倍の撮影ができるのだ。
そしてフィルムの劣化は思わぬ味を醸し出し、補正するのも惜しくなった。
なんの変哲もない画面だが、いい感じだ。

いや農民車の解説を忘れていた。
近野が更新のためアルバムを繰っていたところ、ふと目を引いたのこの車体。
どこが普通のcwfと違うのだろう。
それはどうも、エンジンより前のバンパー部がちょっと角度の上がったところに
あると気づいた。
私はそこに、fam4×2型の面影をみるのだ…。

fam4×2





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fam4×2は、車体を小型にしながら荷台を大きくとるという相矛盾する目的から
設計された、山間地の狭い土地条件が反映したものだ。
坂道で粘りある低回転のディーゼル単気筒を座席の下に押し込み、ギリギリまで
運転スペースを切り詰めたものだが、不安定な座席姿勢を補助するために
足元の床をやや上げた角度にしてある。そしてその左右の角は、
旋回時に山道の脇の木に引っかからないよう、丸く成型している。
これがどうも、今回のcwfと似ているのだ。

fam4×2はよく顧客の要求に応えた設計だったが、より多く荷物を積む、
車体バランスのや馬力の向上といった新たな要求、くわえて市販車の
様式変化による部品不足、山間道路の整備進捗といった
副次的な要素もあり、農民車は水冷化、大馬力が求められるようになった。
そしてfam4×2は淘汰され、cwf4×4に向かう。
だがfam4×2の面影は、まさに全体的な印象として残っている……。

以上は私、近野の想像でしかない。
だが不必要に出たバンパーやフェンダーの形状、切り詰められた
車体幅と前後輪の短さに、やはりその遺伝を感じるのだ。







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農民車の遺伝子は、製作者の好みや癖というものだろう。
それはあってしかるべきだ。
顧客のニーズが単一になろうとも、供給側の個性がなければ、
なにがおもしろいというのだろう。








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■cwf4×4
………………………………………………………………………………………………………………No.17