白を塗れば上品に見える農民車を、もう一色、それも薄桃色を加えたこの二色の農民車、
私はこのようにセンスよく塗り分けられた農民車を見たことがない。普通車でもその多くがシャーシーブラック
に塗られる場合が多い下まわりまでも、白と薄桃色なのだ。なぜこんな手間のかかる塗り分けにするのだろう。
ペンキさえ塗られていればいい、と思っているのがほとんどの農民車オーナーのはず。
もっといえば、塗装が剥がれれば錆びるにまかせるのが普通、この車は極めて稀な個体なのである。
車体そのものは、この項…fam4×2の
No.1に紹介したものと同一形式である。
そのページはずいぶん昔に更新したもので、いま読み返すと無知ゆえに不躾な表現の紹介であるが、
とにかく写真を比較いただければ、塗装だけで雰囲気がこれほど変わるものかと驚かれよう。
No.1のそれが日本の古い萱葺きであるのに対し、No.7はまるで南仏の小粋な別荘である。
こんなシャレた車は、事情を知らない都会者が二十八号線を通りかかって見つけたら、本気で
外国の遊びグルマと間違えて、
「譲ってください」
と横にある家に飛び込んでいくかもしれない。
しかもこのホンダの空冷エンジンの赤が絶妙のアクセントだ。
トドメはお尻についた緑のナンバープレート。これで純然たる農業実用車が、どこから見ても
ジャン・ポール・ベルモンドの所有車に化けるのである。