我が家に薪ストーブが設置されて以来、薪の運搬手段が問題になってきています。
いままでは、実家の父親が乗る軽トラック(660ccエンジン、550規格車体のホンダ・アクティ)をその都度借りてきて使って
いたんですが、借りにいったり返しにいったりする手間がわずらわしいし、なにより、いつまで父親が生きて車を運転できるか
わからない年齢でもあるのです。いまは税金を父親が払ってくれていますが、もしそうした時期が来た場合でも軽トラを維持する
場合、その負担を実家がするのか、それとも私(近野)がするのか。実家は父親以外に軽トラを使う人間がいません。もし私が
使う場合は、車を計3台所有することになります。金銭的・駐車場所的にもちょっと大変なのです。
それをいいことに、ちらりと嫁に
「農民車で運ぶか」
といってみたところ、予想外にいい反応がきたのです。農民車ならば、税金も安いはずだし、どこかのだれかに譲ってもらう
にしても、市販車よりはよほど安くつくはず。手荒にあつかっても(あつかうつもりはないけど)かまわないし、野ざらしでも
(するつもりはないけど)一向にかまいません。
場所だって、ウチには小型のものならなんとかなる空きスペースがあるにはあります。最悪、実家に置かせてもらえば駐車場代を
取られたりはしないでしょう。実家にはわりと広い納屋があるのです。スピードは出ないけど、どうせ年に何回も使うものでもなし。
善は急げだ、嫁の気がかわらないうちに今やれることをやってしまおう、ということで、平日休みを狙って自治体の窓口に詳細を
聞きにいってみました。
その結果は、ちょっと意外なものでした。窓口では私があんまり細かい質問をするので、最初応対してくれた方に代わって、やや
くわしいことを知っている方が出てきて、いろいろと教えてくださいました。
重要な点として、ナンバーおよび税金の概念が近年になってかわってきたということと、ナンバーがなくても公道を走れる、
という事実でした。ナンバーがないと警官に何か言われる、というのはどうも私の思い込みのようでした。
どういうことかというと、ナンバーがついている、ということは、軽自動車税を払っているという証明であって、それがあれば
公道走行可能であるとか、なければ走れないということではなく、ついてなくても走ることはできるのです。
話によると、税の問題では、従来はナンバー交付と同時に軽自動車税(原付・小特も同じ)がかかっていましたが、最近は
それを固定資産税として課税する方向になっています。つまり、業務用の設備機械のように減価償却できて、経費として課税対象
することによって、税に対する業務を単純化しようとするねらいがあるのかと思われます。別々に徴収するとそれだけ事務の手間が
発生しますから、自治体業務の効率化ですね。なお、この変化で税負担が増えるのか減るのかは農民車の値段によると思われます。
私のように農民車の譲渡を受けようとするものにとっては、新たな税負担がなくなるので幸運であります。
また自賠責保険の関係では、そのパンフレットによると、
「原動機付自転車を含むすべての自動車に自賠責保険・共済への加入が法律で義務付けられています。また、フォークリフトなどの
小型特殊自動車(農耕作業用を除く)についても、道路を一度でも走行する場合は加入が必要」
となっています。農耕作業車を除く、ということは、農民車は加入しなくてもいいということになり、実質的には自転車と同じように
ただで持つことができるようなのです。農耕用作業車を対象外とするのは、速度が遅いのと、安全装置を完備するのが現実的でない、
また全農業者に免許を取得させるのも無理があるからでしょう。
もちろん、事故をおこしたときはそれなりの責任を負わねばなりませんので、保険をかけるかどうかは各自の判断がわかれるところです。
役場の担当者も、ナンバーを取るか取らないか、どちらがいいとも悪いとも答えられませんでした。とにかく、税金の徴収方法をまとめようと
しているので、ナンバーを取得する判断も場合によって変わってくる、というものなのです。
ちなみに農民車のナンバーは軽自動車税の標識にあたり、税金は年間¥1600-(注.1)になります。この金額を毎年支払ってもナンバーを
取得する農民車が走っている理由は、おもに保険を受ける条件のためだと思われます。
話を戻しますと、従来からナンバーをつけてない農民車をもらいうける場合も、とくに制限はありません。自転車をもらうのと同じことです。
また、もらったときに謝礼をはらう場合も、小額ならば納税時に申告は考慮しなくてもいいとのことです。
他の自治体のナンバーについても、受付は可能とのことです。
南あわじ市の場合は、高島式のAT80と85のみ、大きさの規定がありますが、私の住む洲本市では、高島式をふくめ農民車についての
大きさの規定はありません。 法的農民車考 参照
説明していただいたときに、役所の方の書類をちょっと覗き見したのですが、何が写ってるのかわからないほど荒くなった農民車の
コピー画像(私には高島式だとわかる)と、寸法、それに現在の推測台数が200台ほどだという記述、徐々になくなりつつあるので
農民車として個別に考慮しなくていい、とありました。
つまり、高島式は「農民車」という名称で国に形式認定されているので、別個に取り扱ってはいましたが、高島鉄工もすでにないし、
それを造っているほかの鉄工所もないので、いわゆる農民車はどんなものもすべて一律にあつかうということなのでしょう。前述の書類
でも、農民車や高島式という用語は一切なく、「農耕作業用車」としてひとまとめにされています。新しいナンバープレートも見せていただき
ましたが、「○に農」や「特」の字もなく、「洲本市」の下に小さい2桁の数字と大きい2桁の数字がならんでいる、シンプルなものでした。
「○に農」のナンバーも、その他小型特殊用ナンバーも、洲本市では譲渡する段階で消えてしまうということです。
農民車が大好きで、微力ながら島独自の産業文化を記録している私としては、さみしいことではあります。
また話がそれましたが、洲本市で農民車を所有するということは、どのような車体でも「農耕作業用」としてナンバーが交付されるか、
それぞれの値段で固定資産になるか、あるいは自転車のように持ってるだけということになります。
今回、私が、自宅で薪を運ぶときに農民車を使うのであれば、ナンバーがなくともじゅうぶんにそこらを走れます。
ただし、私にゆずった方がナンバーを取っていた場合、「軽自動車税廃車申告書兼標識返納書」という書類を役場に提出しなければ、
ゆずった方が税金を払い続けなければならないので、書類に署名と捺印をしていただくことになります。書類はすでにもらっていますので、
すぐに私が役場に届け出ます。またその場合、ナンバーを紛失した場合や、また形式認定番号、車台番号等、農民車によっては確認
できないない記載条項もありますが、それらは空欄でもかまわないとのことです。いままでの所有者(つまり納税者)と、使用者の欄に
記載があって、その情報にもとづいて役所に保管されるナンバーの情報と合致すれば、納税の義務は抹消されるのです、
こちらは、役場でもらった 軽自動車税申告(報告)書兼標識交付申請書(原動機付自転車・小型特殊自動車)。
新たに農民車のナンバーをもらうときに書きます。↓