■458.fwf4×2/960210 一宮町
おそらく小規模の崖地を補強するために、石材を運んでいるのだろう。
手前にはクローラー式の運搬車もあるが、馬力と安定性において
ちょっと難がある。それに農民車のほうが圧倒的に多い量を運べる。
軽トラックの幅で入れない場所では、人は運搬法を考えねばならない。
そんなとき、淡路島には農民車がある、ということは
他の地域より得をしているといえるだろう。
人が写ったが、話は聞かなかった。
時間のなさ、その人の雰囲気、その場の雰囲気。
なんとなく、そんな時もあるのだ。
■459.
U字溝も混じっているので、ここは土建屋の資材置き場なのかもしれない。
fwf4×2型としては、かなり洗練されている。
フェンダーと荷台が同じ高さで揃えられているし、座席の背もたれには
野上自工のfwr4×2型の面影もある。
いや、面影どころか、おそらくそこが製造したのだろう。
農民車を造る鉄工所は、発注者のこまかい注文をきいて、こまかな
変更や改良を施す。野上自工のfwr4×2は汎用ディーゼルを
車体後部に配置するのが特色だが、ときには
「いや、前に置いてくれ」
と言われることもあるだろう。
同じく、車台の二本鉄骨を後ろから前にいくにしたがって、
思い切り狭くにするのが特徴でもあるが、たぶん、そうなってはいないのではないか。
あまりに前の幅が狭くなると、エンジンが置けなくなるからだ。
そのいちばん前には、なにか赤いものがついている。
最初は、荷台の重さと吊り合わせるバラストか、と思ったが、
よく見ると耕運機かなにかのヘッドライトのようだ。
バラストは、エンジン自体によって役割を果たすはずだ。
石材のような重量物を積んで、エンジンも後部にあっては、
上り坂で尻餅をついてしまう。それもあって、あえて
エンジンを後部から前に移動したのだ。
合理的な判断だとおもうが、そういことなら、他の鉄工所に農民車を頼めば……。
そこはいわゆる
「付き合い」
というやつだろう。
世の中そういうふうにできている。
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