■fwr4×2                                                      

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            ■12.fwr4×2/901028/五色町米山

 

 こういう状態の農民車を撮るときは、かなり興奮してしまい、カメラがブレたりする。

 この一連の写真をご覧いただければ、fwr4×2型のきわめて特殊な構造がおわかりいただけるだろう。

 

 fwr4×2型は、おもに山間地の狭く曲がりくねった道での運用を考慮してデザインされたようだ。

 車台は上から見て、Aの字に溶接されている。二本の主材をまっすぐに使うことで、強度と製作時間を節約できる見事なコンセプトである。

 これによって操行輪は車体と十分な間隔をとることができ、旋回半径もぐんとちいさくなる。

 エンジンを後へ持ってきたのも理由がある。車に乗っていて前下方が見えづらいことがあるのは、運転者ならばだれでも

感じることだろうが、そのたいていの理由は目の前にでっかいエンジンが座っていることだ。

 このなくてはならない邪魔者を運転席よりうしろへ下げてしまえば、足元は格段に見やすくなり、路肩の端もとおりやすくなる。

 重量物が駆動輪の近くにあることで、地面と車輪の摩擦がおおきくなり、水溜りやぬかるみからの脱出を容易にする。特に、

山間地の未舗装道にはうってつけである。単気筒エンジンの爆音や振動、排気からも少しは逃れられる。

 

 というわけで、この型は運搬車両としてはかなり特異な駆動形式をとっている事もあり、私のような素人からみると革新的にみえるが、

実はそうでもないらしい。この手のエンジンはセルモーターがついてないので、手まわしクランク始動である。つまり、発進する際に

いちいち後にまわってエンジンを動かし、それから運転席まで歩いていくのである。こういうことは存外面倒なものだ。

 加えて、エンジン操作の伝達装置なんかも大げさになってくる。アクセルのワイヤーを2メートル以上も伸ばすのは、強度上けっして

いいことではないし、微調整もむずかしくなってくる。最後部で発生した動力を一度中央にもってきてトランスミッションにつなぎ、

また後に戻して車輪につなぐというのもややこしい。

 それと理由はよくわからないが、エアクリーナーをかなり前方まで引っ張ってこなければならないらしい。排気や車輪のかきまわす埃が入るのだろうか。

 一番やっかいなのは、エンジンが地面にひっかかる事だろう。写真14.を見ていただきたい。エンジン架と地面は20cmもないだろう。

公道ばかり走るのならともかく、田畑や畦道をゆく農民車には低すぎて、扱いづらい車らしい。

 

 そういうことでfwr4×2は数が少ない。新車も見かけない。聞くところによると、この車がはやったのはほんの一時期のようだ。

見た目の利点はすぐに実質の欠点に置き換えられた、ということだろう。

 それにしても、この車幅の狭さはどうだろう。

 こういうところが考えに考えぬかれて造られる市販車にはない農民車の魅力なのだ。

 

 ■13.      ■14.

 

 

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