■廃棄車両
たびたび書いていることだが、現代日本において農民車という車は常に驚くべき存在だ。
スクラップの市販車を寄せ集め、建築用の鋼材を継ぎ合わせて造られた自動車が、そこらに走り回っている淡路島は、どう考えても
普通ではない。普通ではないものが普通にある淡路島に住んでいる私ではあるが、それでもまだそれを上回る驚きを与えられることが
しばしばあって、そのたびに生きることの喜びを見出したりしてしまう。
話がオオゲサになってきたけど、この遺棄された農民車を見つけたときの衝撃は、そりゃあもう大きかった。
かつて三輪農民車を発見したときもかなり生きる喜びを感じたものだが、この写真の場合は車両そのものよりも、
その再利用のされかたが尋常でないのだ。
最初は、農民車があるとはわかったが、どういう状態の場所に置かれているのかがわからず、近づいてみたら
荷台を地面に置いてあって驚き、さらによくみたら荷台を置いてあるのではなく車体そのものを地面に埋めてあるのに仰天したわけだ。
そしてその目的がどうやら「橋」というか「フタ」というか、なにも農民車を利用せずともよかろうという目的なのが判明するに及んで、
私の驚きも頂点を越えて脱力感の谷底へと滑落していったのだった。
いったいなぜ、こういう場所にこの農民車は置かれたのだろう。
いや、用水路にフタをして、少しでも使える場所を増やそうという試みはわかる。
しかし、その材料として農民車をはめ込むのは、首を傾げざるを得ない。こういう形で農民車を据えるには、
それなりに穴を掘ったり、ユニックを持ってきて、あるいはパワーショベル等の重機を使わねば
かなり困難な話だ。ようするに手間がかかるのだが、それがいちばん手っ取り早かったのだろうか。
鳥居さんを残したままで、向こう岸にわたる際の不便はどうでもよかったのか。
それとも、たまたま勢いよく走ってきてそのまま落ち込んだだけ?……そこまでのスピードは農民車にはない……。
もうどうでもいいことのように思えるが、荷台に点検口があるのと、トランスミッションの位置からして、形式としてはfwr4×2だろうと思う。
このような末路をたどるとは、農民車人生としてしあわせっだったのか……。