■廃棄車両                    
                                     ……………No8








                                              ■444./961020/五色町鳥飼




 偶然ではあるが、前回の廃棄車両も五色町鳥飼中のものだった。
その前回分もふくめて、もはや四半世紀前の撮影なので、さすがに詳細な地点は
忘れているし、車両そのものも当時の感想としては忘れている。

鳥飼は海に面したところで、川に沿って扇状地が奥ふかく続き、その両側に山がある。
といっても淡路島のこと、そう広い範囲ではなく、小さくまとまって
そうした地形になっているのは鳥飼だけではない。淡路島内では、中規模の
農作地帯といったところだろうか。
ごくごく小規模の農業は別として、どうしても機械は必要になる。中規模といえど、大規模と
持っているものはあまり違わない。しかし効率・採算性では大規模に劣る。
したがって、一次産業に見切りをつける人も多く、維持努力を放棄された
田畑、納屋、農業機械はよく見られる。

写真の放棄農民車は、おそらくfwm4×2か、fam4×2。
つまり農業用汎用水冷ディーゼルを座席下に積んだ後輪駆動車か、
農業用汎用空冷混合ガソリン搭載型だ。
エンジンがないので確定できないのは仕方ないが、おそらくは
空冷混合のほうではなかろうか。
この狭い傾斜地に使うには、小さくて地面が見やすいトラックが重宝する。
するのだが、やはり市販車の流用部品を使っているような改造車は、
交換部品の途絶とともに廃棄される運命にある。






                      
                                                                           ■445.





比較的、曲線の多い造形が特徴なのだが、これは果樹園など作物が密に
植えられた土地を走行するとき、大切な木の幹を傷つけないようにする配慮という。
タイヤフェンダーの外側が丸めてあるのは、乗降時に角で足を傷つけないため
かもしれない。
小さくて丸い姿はやさしく、かわいらしく見える。

運転席床面の角丸な先端部は、上向きに傾斜がつけてある。これは
運転者が踏ん張れるようにした配慮と推測する。
エンジンが座席下にあるので、座席はどうしても高くなる。運転者の姿勢は
立った形に近くなり、安定がわるい。
できるだけ車体を小さくしたため、運転席が非常に寸詰まりにもなった。
足を前に向けてまっすぐ伸ばすスペースもない。
クラッチとブレーキが、ハンドルポストと同列にならんでいるくらいだ。
そこで急停止時にすこしでも足で体重を支えるべく、床面に傾斜をつけ、座席と近くしてみたのだ。
これで体が前に投げ出されないよう、ブレーキペダルとこの傾斜で右足を踏ん張れる、だろう。
なんならクラッチペダルも一緒に左足で踏み込んだかもしれない。
それでも足りず、ハンドルで腹を止めたかもしれない。

……ちょっとやりすぎの小型化かも。

鳥居さんが二重になっていて、一見ダンプ式の荷台なのかと錯覚するが、
よく見ると座席の枠で、エンジンのメンテや給油時にと、シートごと
跳ね上げ式にしてある。同型車には、このシートを取り外し式にした
タイプもある。取り外し式は、急停車すると前に外れたかも。



ここが圃場整備された場所だったのか、覚えていない。
わりと大きな柿の木があったり、ヒナギク(?)やススキが生え、古い土壁の
納屋があるところをみると、整備はまだだろうか。
昔ながらの棚田は見ているだけなら美しいが、その利用はむずかしいと聞く。
同じように、この古い農民車も時代遅れの代物だ。
残念ながら農民車は朽ちていくだろうが、棚田は残ってほしいものだ。





          
                                                   





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