■廃棄車両
■396./920510/五色町鳥飼中
また廃棄車両を更新してしまった。
おまけにfwr4×2という、個性的な農民車群のなかでもいちだんと個性のきつい
構造のものである。
その細長い飛行甲板のような荷台と、なぜか車幅いっぱいまで広げられていない
「鳥居さん」は、目撃したものの脳裏に強い印象を植え付けるのだ。
ため池の土手に放置されたこの個体は、こういう塗装でもあるのかと
思うほど均等に、きれいにサビが覆っている。
■397.
春風にふかれてたたずむ姿は、捨てられた車両がもつ哀れさをあまり感じさせない。
それはおそらく、もともとの姿が削るところがないほど単純で、強度面で最低限の
部材からできているからだろう。
余分なものがないと、野ざらしとなってもなかなか脱落する部分がない。
世捨て人のように達観と諦観を醸し出しつつ、
草に撫でられている。
■398.
ところでだ。
私は以前、このfwr型のハンドルが、なぜほんの少しだけ中心線からずれているのだろうと
疑問を呈したことがあるはずなのだが、どのページでそれを書いたのか、
情けないことに忘れてしまった。
いよいよ痴呆の前触れなのか。
とにかくどこかで書いたはずだが、その謎はとけている。
ようするに、ハンドルの右側から右前輪まで伸びる車軸の長さが、
流用先の農民車の幅半分の長さに足りなかっただけなのだ。
どうしても中心にハンドルをもってきたければハンドル右側車軸の倍の車幅とするか、
ハンドル右側車軸を延長するかしかない。
前者はあまりに狭すぎてトラックとしての主目的に合わないし、
後者は造る手間がかかりすぎる。
ハンドルが車体中心線にないのは当たり前なのだ。
孤高独特、fwr4×2型の後ろ姿は、余人の評価など気に留めない。
ただ五月の風にふかれるのだ。
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