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            ■36.caf4×2(堆/901123/南淡町国衙

 

 牛の糞尿を天日で干すと、やがてぼそぼそとした、手に触れても汚れないような乾いた団粒状態になる。

これを土中に投入すると、植物にとっての格好の栄養素となる。

 つまり肥料になるのだが、淡路島では一般にこれを『ばらけ』と呼ぶ。田畑にばらまいて使用するために、

そう名づけられたのだと思うが、そのものの感触まで伝わってくるすばらしい名称だと思う。

 

 堆肥散布車とはつまり、そのばらけをばら撒くための装置を搭載した農民車である。

 散布装置は、通常大手メーカーの量産品をつかう。普通はトラクター等に牽引させて使用する。

量産といってもどの程度の数が製造されているのか想像もつかないが、とにかくそれを農民車の

荷台に取り付け、耕作地をのろのろ進むと自動的にばらけがまんべんなく播かれる。

 ばらけ自体はごく軽いものだが、手作業で広い場所に播くというのは、他の農作業と同じく単調で疲れる仕事である。

単純作業を機械でやっでもらうのは当然である。

 

 散布装置の構造は、簡単にいうと大きな箱の底がベルトコンベアー状になっていて、後部には

何重にもなった羽根車が前後方向に回転している。箱の中にばらけをいれると、ベルトコンベアーが

羽根車の方向へ運ぶ。羽根車はばらけをいきおいよくばら撒く、というわけである。

 

 動力には、当初は写真のように小さな専用エンジンを取り付けてあるものが多かった。

採用したエンジンが小馬力で、ベルトコンベアーと羽根車を回転させるだけの余力がなかった為である。

乗用車のエンジンが大馬力化するにつれ、その中古品を使う農民車にも余裕ができてくる。一基のエンジンですべてを

動かす堆肥散布車も多くなっている。

 

 乗用車の空冷エンジンを積んだこの堆肥散布車は非常にめずらしい。私は、まだこの一台にしかお目にかかったことがない。

 

 ここで、ちょっと写真36のバンパー部分に注目してもらいたい。

逆光でわかりにくいが、ここに二、三個ついているものは、鉄の塊である。

 なんのためにこんなものがついているのか、写真38を見てもらいたい。ちょっとした段差にかかると

(田から畦道にあがる時など)、後にひっくり返りそうな気がしないだろうか。

 そう、この鉄塊は重心を前に移すためのカウンターウェイトなのだ。

 普通の農民車に散布装置を載っけたので、バランスが悪くなったのかもしれない。

この場当たり的な処置が、思わぬ面白さをこの車に与えている。




■付記

 平成二十三年の九月八日、「農民車史」のおたけさんから連絡があり、
 この堆肥散布車は三原町神代のFさんという方の所有だったそうです。
 てっとりばやく散布車がほしかったFさんは、牽引車用としてデリカ機器という会社でつくられた散布機を、
 手持ちの農民車に載せてみたようです。ちなみにその牽引式散布機、農業界では「マニア」と呼ばれているようです。
 もう三十年以上前、昭和五十六年〜五十八年ごろに出回った製品で、Fさんも高齢なうえ、搾乳農家でもないので、
 いまは処分されだだろうという話です。
 今の主流は、牽引型の動力が車体と別にあるこのページのようなマニアではなく、走行動力と同じエンジンで使用する、
 「マニア車」と呼ばれている堆肥散布車が主流だそうです。動力が二つあると、いちいち操作が面倒ですからね。
 
 おたけさん、いつも生きた情報をありがとうございます。

 

 

 ■37.      ■38.

 

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