■faf4×2                                                     

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■337.faf4×2/940618/南淡町阿万
 
 

 

 

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農民車には雨がよく似合う。
個人的にいちばん好きな季節は若葉萌えいずる五月だが、そのあとの梅雨もまた捨てがたい。
まだ生まれたばかりで生命力も耐久性も貧弱な幼い葉を、六月の雨は頑健な分厚い葉に成長させ、
葉は虫たちの栄養となり、しきりな光合成を働かせてくれる。
長雨はうっとおしくてじめじめするが、気が滅入ることばかりではない。いうまでもなく、日本の農業に
とって梅雨は欠くべからざる恵み。国民は梅雨をありがたく受け入れるべきなのである。

そういう意味でも、農民車というものには全候性がもとめられる。近年、乗用車の電子化によって、
農民車に市販車の中古部品を流用することがむずかしくなっているのでは、と危惧している。
携帯電話などは、まちがって洗面器にボチャンと落としても、即座に拾って十分に乾かせば機能を取り戻す。
しかし農民車は、作業中も長期保管中も雨ざらしになる可能性が多い。いや、それを前提として造られなければ
ならないといっていい。なんとなれば、農繁期となる田植え時期は、梅雨と重なる場合が多いからだ。
電子部品の多い市販エンジンとちがって、農業用の空冷エンジンは雨ざらしも条件に入っているにちがいない。
スピードは出ないが、信頼性は高いだろう。

写真337.のfaf4×2は、まさに田植えをが一段落したところだろう。いや、この農民車が田植えをしたわけではない。
田植えは無論、田植機がやるのだ。この農民車は幼苗が植わった田植機用の皿を運ぶ役目を一段落したところだ。
荷台上の、鉄のアングルで溶接された棚は、農民車と同じように近所の鉄工所で組み立てられたものだろう。
地元で作られた道具で農作物をつくり、地元でいただくのは理想的な暮らし方だが、それで儲けていくのは
むずかしいことだともいう……。
■338.
エンジンは三菱のG6L-2という機種なので、たぶん六馬力程度。横のフェンダー上には
バッテリーに充電するためなのか、乗用車のオルタネーターが追加され、Vベルトで駆動軸と繋がっている。
オルタネーターは濡れてもいいんだろうか?
G6L-2の乗っかっている車台部分は、やけに前方が空いていて、あるいは以前は軽乗用車の
エンジンくらいは使っていたのかもしれない。
前輪のホイールは新しく銀色のスプレーを吹かれている。雨ざらしではあるが、大事に使われているのだと
思いたい……。