■faf4×4
どこかですでに書いた気もするが、私はあまり魚眼レンズというものが好きではない。
なにしろ被写体が針小棒大になって大ゲサだし、ものが歪んで写ってしまう。
人間の目では、意識して見ないとそういうふうに知覚できないので、その写真はかなり不自然で非日常的だ。
「そこがいいんだよ」
という向きも当然あるのだが、少なくとも私はほとんど使わない。
記録写真としてそういう点は邪魔だし、自分の性格そのものにもあってないような気がするのだ。
写真265.以下の四枚は、めずらしくズームレンズの28ミリで撮ったものだが、いつも使っている50ミリでは
この農民車の全体を捉えられなかったのだ。四方を壁と車と農機具にさえぎられて、離れるとほんの一部分しか写せないし、
隙間にはいると体が思うように動かせないほど狭くてどうしようもない。
こういうときは臨機応変に魚眼レンズを使う。
その判断はわれながら大成功で、この農民車の全体像をつかみ、かつその特徴をよく捉えていると思う。
その最大の特徴は、そのかなり傾斜のついたステアリングだ。
こんなに長くて斜めになったシャフトを、私は見たことがない。最近の軽自動車は、軽トラックを含めて
シャフトの中ほどに自在継手があって折れているので、ハンドルそのものはだいぶ斜めになっているが、
その下部はより垂直に近くなっている。そのほうが車体そのものを短くまとめられ、運転席を広くとれるのだが、
この車体のように一本軸の旧式なシャフトの場合は、斜めにすると運転席前を
おおきく張り出させなければならない。写真を見ていただければお判りのように、エンジンの前は不必要に
開いていて、ヘタすると人が腰掛けて一服できる縁側になっている。冬はエンジンの熱気で背中がぬくいし…まさかそのために
こうしたわけではあるまい。
直角にちかいハンドル面は、、人間の上体を腰から動かさないとハンドルの向こう側まで手が届かないものだ。
ハンドルが斜めだと腕だけで操作できる。この農民車の製作者も、それを狙ったのだろう。
だがしかし、その効力を充分に発揮させるには、上体も同じように斜めにしなければならないと思う。
想像してほしい、完全に垂直の背もたれを持ち、かつハンドルまで近すぎるこの運転席では、
かえって斜めのハンドルを回しづらいのではないだろうか。
それに、重い車体と分厚いタイヤは腕だけではなく上体を使って回したほうが運転しやすいのでは……。
実際に運転してみないことにはその操作性が判断できないが、他にこの手の斜めハンドル車がないところをみると
やっぱりやめといたほうがよかった例なのか。
まあそういう事以前に、単にハンドル軸を切り詰めて短くするのが面倒なだけだったのかも。