■faf4×4(バ                                                  

…………………bV
 

 

 
                       ■392.faf4×4(バ/991009/三原町八木新庄





ここは旧三原町のとある交差点付近。詳細はわからないが、つねづね様々な農業用の中古機械が
あつめられている。この日はまた白菜の残渣もあつめられた中に、ひどく珍しい車体があった。
空冷2サイクル混合ガソリンエンジンのバキューム車だ。
バキューム車はだいたいディーゼルか、乗用車用の馬力があるエンジンを使っている。
理由はもちろん、積み荷が重いからだ。
重量物を運ぶ想定だったのか、太く大径のタイヤが力強い。エンジンはやや大型ではあるが、このでかいタンクに
糞尿を満載して走るのには、まさに荷が重いのではなかろうか?






                                        ■393.




液体を収めるタンクは、一般的なものでも車体そのものよりは小ぶりなものだ。
言うまでもなく液体は重いし、走行中の揺れで中身が波打つので固体よりも重心が動きやすい。
右にハンドルを切れば左に寄り、遠心力と相まって倒れやすくなる。
転倒防止のため、初めから運ぶ量を抑えなければならない。
しかし見た感じだが、このバキューム車は若干タンクが大きい印象がある。
タンクの大きさには道路交通法上の規定があるのかどうか、寡聞にして知らないのだが、
農民車を使う方からすると、やはり一度に少しでも大量の荷物を運びたいだろう。
その傾向は、ほかの積み荷の場合でもよく見受けるものだ。
収穫物をとんでもなく高く積み上げて、運ぶ最中に落下・転倒させたりする
光景は、まあ三原平野の農業地帯では数年に一回は見る惨状である。
人はそうした痛い目をみて「安全第一」を痛感するものだが、
このバキューム車は幸か不幸かそういう事故には遭っていないのか、
横転したような傷跡はない。






                                       ■394.




指示器が腕木式になっているので、相応に古い車体なのだろう。
きれいに曲げられた助手席の手すりからも、素性はいい車体に違いない。
タンクをどければバランスもいいはずだ。しかし、タンクは
後輪のほぼ真上にあり、ハンドル操作は軽くなるが全体の重心は後ろすぎる。
トラックの貨物重心は四つの車輪の交差点が最も安定する。
上り坂になると、後輪を支点に天秤状態になって、尻餅をつくこともあるのだ。
前述のように、液体が荷物だとその危険性はより高いものとなる。






                                        ■395.




そして最大の特徴は、荷台に数十センチの台架を取り付け、タイヤハウスをかわしていることである。
そうしないとタンクが収まらなかったのだろうが、この処置によって重心が高くなり、
より一層不安定な車体となってしまっている。ここまで大げさなものを作って高くしなくとも、
タンクの支柱の間にのみ最低限の鋼材でも噛ませればもっと低く抑えられたのでは。
ま、排出時の操作はこの高さのほうがやりやすそうだが。
そして謎なのは固定方法で、支柱の足にボルトで留めるのが一番確実なはずが、なぜか
ホースを掛けておく目的のフックにワイヤーを掛けてて、ターンバックルを使って固定している。
おまけに車体側はチェーンも混じっている。しかも右前のフックに至ってはその固定さえされていない。
いくらなんでも雑すぎる気がする。
考えてみればポンプ用のエンジンもついてないし、このタンクそのものが単なる積み荷なのだろうか……?

こういう試行錯誤がいろいろと想像できるのが、農民車の楽しいところなんだけど。
しかし元がいいだけに、もったいない改装をされたものである。

 
 

 

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