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             ■281.fwf4×2(バ/911104/緑町中條中筋
 
 

 

 「車は消耗品、古くなったら中古屋に売って新車に乗り換えるのがいい」
という人の気持ちになったことは、いままでに一度もない。
できることなら毎日車をいたわって、埃をぬぐい、ワックスをかけ、
ツヤとコクの生まれた車にいつまでも乗っていたいというのが願いだ。
雨にあたればタオルで水分をとり、走り終わったらば古毛布でもかけて、猫がボンネットに乗って寝るのを防ぎたい。
まあしかし、実際はそんな手間ヒマかける時間などほとんどないのだが。

 そういう願望をもつ人間にとって、車庫の屋根というのは必須の条件になり、なんとしても手に入れたい
最小限の建築物になる。土地と金さえあれば、屋根のない駐車場に車を留め置くなどもってのほかだ。
たとえビニールハウスのような簡易ガレージでも手に入れ、愛車が雨にそぼ濡れるのを防がねばならない。
鳥の糞にその塗装を汚されぬよう、紫外線に樹脂部品を侵されぬよう努めねばならない。
屋根さえあれば、そういっったおおくの侵害からなんとか車を守ることができるのだ。

 農民車にとって、屋根といえば玉葱小屋になる。
淡路島のほとんどの農地で見られる玉葱小屋は、まさしく「屋根」を持つためだけにある建築物である。
収穫した玉葱も、車と同様に雨や鳥の糞、日光から守らねばならないので、農民車も玉葱小屋にあることがおおいのだ。
 しかし、玉葱と農民車がいつも同じ場所にあるとは限らない。
玉葱を玉葱小屋いっぱいに吊るしきってしまうと、必然的に農民車を停める場所がなくなってしまうからだ。
本来が玉葱を保管することにあるので、農民車は当然追い出されることになる。
 幸運な農民車が次に行く先は普通の納屋か、古い農家なら納屋門、もしくは長屋門という屋根つきの門におさまる。
こういう場所は人も通るし壁もあるし、案外玉葱小屋よりも快適かもしれない。しかしそんな幸運は少数にとどまり、
たいていは屋根のないところで、申し訳にエンジンと運転席だけをビニールで覆われていたりする。
しかしそれも丁寧なほうで、ほんとうに不幸な農民車は草っ原にただ放置されているのだ。
一般に農家の人は物を大切にしていると思うが、なまじ頑丈で壊れにくい農民車は、かえって手荒に扱われるのだろうか。

 写真281.のバキューム車は、幸せなことに物持ちのいい人物に使ってもらっているようだ。
小さな建物は、おそらく高橋式の、この小さな農民車を収納するのにも事欠く狭さのようで、右の前輪あたりが
おさまりきらずに残ってしまっている。だが、その持ち主の機械にたいする愛情は十分に感じられる。
前か後ろだけまっすぐに入れれば簡単なものを、できるかぎり雨に濡らさないよう努力したのだ。
パワステのない、しかも重いタンクが載って余計に重いハンドルを力をこめて据え切りし、チョークを調節し、
半クラをあわせながらゆっくりゆっくり車庫入れしたのだ。
 その持ち主の労に感謝するかのごとく、タンクやエンジンはつやつやと光り、元気さを保っている。
ライトはいきいきと輝いている。きっとこの農民車は、まだこのボロ小屋で斜めに収まっているにちがいない。

 それにしても、この小屋はなんのための小屋だろうか。
土壁に本瓦葺きの、いまどきの建売住宅よりよっぽど丁寧な造りだが、なんでこんなに小さいんだろう。
コンクリートの塊と、赤い木箱はいったいなんのためだろう。
消防用のポンプでも置く小屋だったのかなあ。

 

 

 
 
 
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