■415.fwf4×2(バ/961116/洲本市安乎
いまから二十年以上前に撮影した写真で、もはやどこで出会ったかも忘れてしまった
農民車である。特徴ある二本溝の前輪、鳥居さんの両端にある腕木式指示器、
車台にのこる水色の塗料など、高島鉄工の認定農民車・AT-85もしくは同80であることがわかる。
しかし正面からではわからない、驚きの事実が後ろにまわるとあったのだ。
■416.
その後部荷台には、全幅いっぱいに造られた豆腐のようなアルミ製のタンクが取り付けられていた。
基部にはタイヤを回避するために鉄骨によってかさ上げされ、かつギリギリまで
かさ上げは低められたため、アルミ桁の一部はタイヤの弧に沿って切り取られている。
高さはまた鳥居さんにピッタリ合致していて、タンクがこの農民車のために
造られたものであることを表している。
しかも通常、AT-85および80には、荷台の側板を取り付けるための鋼材が車台横に何個か
溶接されているが、この車体にはそれがない。
ということは、はじめからバキューム車として造られたということのようだ。
タンクも高島鉄工で造られたのだろうか。
これが家畜の糞尿を入れる容器であることは、車台後端がひどい腐食によって
ボロボロに朽ちていることからもわかる。
この部分だけこうも錆びるというのは、たびたびここに酸性の液体が
かかったことを意味している。
なお、後端部はそう長くはないので、この車台はAT-80型である。
※この部分を訂正します。AT-80は軸間距離が極端に短く、たんに荷台の長さだけが
その特徴ではありませんでした。これはAT-85型を基本とした車台です。
参照:おたけさんの農民車カタログ
余談だが、タンクの上部が写っていないのは近野の撮影ミスではない。
ネガフィルムには全体が写っているし、プリント写真にも全体は写っている。
これは今使っている安物スキャナーの取り込み範囲が全体に狭いからである。
購入代金をケチって安いのを買うと、解像度は低いわ色調は不自然だわ、
おまけにフィルム全体を取り込むことができないという
腹立たしい機械を使わなければならない羽目になるのだ。
その意味では、撮影ミスではないがスキャナーの選択ミスではある。
反省せねばなるまい。
このことは、これまでにもことあるごとに言ってきたが、
これからも言い続けねばならないだろう。
■417.
繰り返すが、タンク後端がやはり切れてしまっているのは撮影ミスではなく、
安物のスキャナーが悪いのだ……。
話を本筋にもどすと、このタンク上部には前後にふたつの大きな扉があって、
中央部にむかって開くようになっている。後部の扉には、さらに小型の丸い蓋があり、
蓋の一つは外されて、ひもでタンク横にぶら下がっている。
タンクの前に何本も白いひも状にたれているのは、なにかの塗料のようである。
糞尿を吸い上げるためのポンプがないので、厳密にいえばこの農民車は
バキューム車とはいえないが、あらたに「糞尿運搬車」と分類するのも
煩雑になるので、ここはそのままとしておく。
中央部にはポンプの基部らしきものもあるので、なにかの理由で
ポンプが外されているだけという判断もできる。
運転席の座面がなくなっているが、始動用の鍵がないこの手の農民車は、持ち去られるのを
防ぐために座面を外しておくことがよくある。
なお、左手前に映っているシフトレバーは、おそらく「コマンド」と
名づけられた、農民車と同じように島内の前田鉄工で造られていた
超小型ホイールローダーのものである。
下の写真にはその後部が写っている。
残念ながら、近野にこの分野にまで食指を伸ばす余裕はない。
■418.
横から見たところでは、恐るべきことに右後輪の板バネの伸縮を吸収し、保持する
シャックルが車台から外れているのが確認できる。
これはおそらく激しい腐食のためであり、その損傷が再起不能に思われるほど深刻にみえる。
致命的な傷を負ったこの農民車が、立ち直ることができたのだろうか。
なお、運転席部分と荷台部分とで、画像の色合いが違って見えたという方がいれば、
それはまさに慧眼である。
この画像は安物スキャナーの取り込み範囲が狭いため、同じフィルムの
コマを前が切れたものと後ろが切れたものを二枚取り込み、
フォトショップ7.0によって一枚に合成したものだ
(写真416.のナンバーも、数字を合成してある)。
昔からケチではあったが、高いソフトを買う余裕くらいはあった。
いまはない。
だから安物スキャナーに甘んじているのである。
同じコマを手でずらして取り込んだだけなのに、色調が違うのはなぜだ。
それは安物だからだ。
この色調差は、フォトショップによってかなり補正することができるが、
諸兄に安物スキャナーの取り込みムラをわかってもらうため、
わざとそのままにしている。
同じフィルムでも、取り込むたびに色調が変わるのだ!
次の写真は、そのボロスキャナーで取り込んだ同画像の車台桁部分を
アンシャープマスク処理して拡大したものである。
■419.
高島式AT-80、またの名を高島ファームカーである証明の、ふたつの銘板らしきものがあった。
近野が「ここには銘板があるべきだ」と知っていなければ、
わからないほど画像は荒い。
いくら高いソフトを使っても、スキャナーの解像度が低くてはいかんともしがたい。
まったくどうしようもないのである。
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■fwf4×2(バ