▼派生型(特殊車両)                                               

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 ■74.fwf4×2(漁/910921/南淡町土生

 

 

 

 沼島およびその対岸の土生漁港に局地的に存在する、この奇妙な農民車は、農民が使っているのではなく、漁民が使うものである。
 したがって、私はこの車輛を「漁民車」と呼ぶことにする。
 漁民車としての特徴を述べよう。この車は後輪駆動であるが、その後輪が前輪よりもちいさいのである。こんな例は他の農民車はおろか、
一般車輛でもまず見られないのだが、理由を推察してみる。
 この車輛は土生港の施設内と沼島でしか使用されないことは既に述べた。そのため、長距離の運行は考慮の外にある。しかも
大抵コンクリート舗装の上を走っている。こういう条件では、車輪はちいさくてもいっこうに支障がないのだ。
 次に、荷台を低くとれる事だろう。地面から荷物を積む際、高い場所よりも低い位置に荷台があるほうが楽なのは当然である。
 荷台上部についている巻取り装置は、魚網や海苔の養殖網をまきとり、荷台にあげるためのものだ。これも他の車種にはないものだ。
 海辺にもろに面した土地柄、防錆対策に車体のほとんどがステンレス製である点も重要だ。
 特異な形態をしながらも、この漁民車という機械はきわめて合理的にできている。他の地方ならいざしらず、土生や沼島で本格に農業と漁業を
兼業している人は、まずいない。漁民車が農作業に使われることはないのだ。しかも仕事の範囲が限定されており、ゆえに実用性がたかいのだ。
 前頁にも書いたが、この漁民車が他の土地で普及する可能性はゼロだろう。土生港は漁港としてかなり広い。漁網を干すための広大な
コンクリート面があってこそ、この小さな車輪が生きる。沼島のように、交通機関は軽トラックが数台、他は若干の原付と自転車しかないような
島であるからこそ、不恰好なスタイルがゆるされるのだ。
 余談ではあるが、沼島には普通の農民車も置いてある。それと漁民車をあわせると、軽トラックと原付の合計より多いにちがいない。

 

 

 

 ■75.

 

 

 

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