■cwf4×4(バ
私は苦労の末に普通免許を取得した頃、車に乗って知らない道をあてどなく走るのが好きだった。
大好きな農民車を撮りに、相棒のカメラを助手席に置いて細い道をどんどん進んでいくと、不意に
道がなくなることがある。道というのはどこまでも繋がっているような印象があるが、淡路島にかぎらず
田舎ではよく道がなくなる。山の中へ入りすぎて本当に道が消えてしまう場合と、人ん家の庭先へ侵入してしまう場合だ。
写真233.の農民車を見ていて、そんな時の当惑を思い出してしまった。
ま、たいていは家の住人は留守で、誰も出てこないので恥をかくことはないのだが、なんせ人の家である。
しかも車にのったまま庭に乗り込むのだから、街中でやったら一騒動だ。
関係者が集まらないうちに、早く立ち去らねばならないが、稚拙な運転技術で狭い未舗装道をバックするときほど
焦ることはない。そんな道は、たいていすぐ横が谷底だったり田んぼだったり、はたまた溜め池だったりするのだ。
オタマジャクシが泳ぐ小さな溝に脱輪したことも、一度や二度ではない。
おかげで簡易ジャッキの使い方は上達したと自負している。
話を本論にもどそう。
233.のバキューム車は、これまで紹介したうちでもっとも発展段階にある車両だ。
車体そのものは、cwf4×4のNo.5と共通で、エンジンもほぼ同形式だろう。
製作者の冷静な点は、車体が大きくて馬力があるからといって、タンクまで大きくしなかったことだ。
液体をタンクに詰めた場合、見た目以上に重量がかさむ。よくばって車格いっぱいの
大きなタンクを荷台に据えると、重心がたちまちはね上がってしまう。坂が多く、細く曲がった道ばかりの
農村では危険なことこの上ない。小さなタンクをバランスよく配置したことで、この農民車は
安定した姿を得ている。一度に大量の荷を運ぶよりも、安全が第一なのだ。
これからは、こういう農民車が主流になっていくのだろう。
私としてはやはり安定と思慮を欠いた不細工農民車が好みなのだが……。
ちなみに、外観が安定しているとはいえ、やはりタンクを満タンにすると、今度は
重心が後輪に移ってしまって、前輪接地圧が低くなって充分に曲がれなくなる恐れもある。
設計段階の安全性と共に、運転者の安全意識も重要な点ではある。
最後に、運転席の肩にある妙な赤いレバーは、運転しながら最後部にあるタンクの栓を
開閉するためのものだろう。安全面からいえば、ちょっとマズイかも。
農民車をもとめて、いつも脇見運転をしているような人間のいうことではないが。