■fam4×2
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■172.fam4×2/940104/津名町中田
ひきつづき、機能的な形をしている農民車を紹介する。
車台の基本形はfwm形式にのっとっていると思われるので、そちらも参照してもらいたいが、→[fwm42.htm]
それにしても、より考え抜かれたシルエットを持ったのが本項の農民車である。
「物を運ぶ」ということに機能を限定しているので、複雑な機構…荷台がダンプするとか、せり上がるとか、四駆から二駆に
切り替わるとか、油圧ショックアブソーバーがついてるといった類の工夫はなにもない。だが、それだけに単純で美しいデザインに
仕上がっていて、私などはみていてほれぼれしてしまう。
農民車というものは、安易に思いついた金具を取り付けまくって、複雑怪奇なものになってしまった
日曜大工的造型もおおきな魅力だが、逆に思考錯誤を繰り返した後のムダのない造型も捨てがたいものだ。
たとえれば、黎明期のあぶなっかしい複葉機と、実戦経験を積んで磨き抜かれていった軽戦闘機にあてはめることができる。
さしずめ、写真172.などは九七式戦闘機か零戦になるだろうか。
つい偏った趣味の話になってしまったが、この贅肉のない骨格をみていると関心せざるをえない。必要な構造そのものが
すなわちデザインになっていて、部材が意匠になっているともいえる。そのなかで特筆すべきは運転席の床にみられる曲線部である(173.)。
■173.
この縁にかけられたアールは、いったいどんな思いで作られたのだろう。あまりに実務的で無機質な外観に、愛想なさを
感じた製作者が、サービス精神でつけたのだろうか。いずれにしても、このアールをもってして、車体にぐっと個性的な表情がうまれている。
画竜点睛とはこのことだ。数多い農民車の中でも屈指の出来映えである。
動力をより単純な空冷単気筒のものにしたところも徹底している。ハンドルも油圧なし。腕木式の方向指示器すらない。
塗装にいたってはコールタールを塗りたくってある。まったく恐れ入る簡明さだ。
ただひとつ謎なのは、これが農機メーカーの廃車置場にあったことだ。修理のための仮置きであったことを
祈るほかないが、どうなのだろうか……。
最後に、今一度そのうつくしい姿態をみていただきたい。
なお、荷台に立てかけてある鉄枠は、農民車の荷台の骨組みらしい。
■174.