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                                 ■332.fwf4×2/081025 淡路市野島常磐 淡路景観園芸学校
 
 

 

 このサイトには、ありがたいことに様々な人からいろいろな反応がくる。だいたいが農民車という
とんでもなくマイナーな存在を主題としているため、反応は限りなくこないだろうと覚悟をしていた。
たとえそうであっても気になどしたことはなかったが、やはり書き込みやメールがくるとかなりうれしい。

 ネットで知り合えるそうした人たちは、私もそうだが個人情報を明かすことはあまりない。
当然のことながら、不思議な関係である。かなり親しくなったつもりでも、たがいに何も知らないといっていい。
じかに会ってなにか言いたくとも、住所はおろか顔も知らないのだ。それなのに何くれと無く情報をくださる、
無償の行為に富んだ人たちが、この世の中にはまだまだいる。捨てたモンではないと思う。

 sawaganiさんも、そうした人の一人だ。
 この人はもともと滋賀県の人だったと思うが、どういう運命かいま淡路島にいて、農民車のある
職場にお勤めの様子なのである。いくらこのHPを見てくださるといっても、まさかわざわざ農民車のある職場を
選んで就職なさったのではないと思う。しかし農民車がある職場というのも日本ではなかなかない。
農民車のふるさと淡路島でもなかなかないのだ。
 sawaganiさんはそういう珍しい職場で、私が贈らせてもらった十万ヒット記念・農民車ポスターを机のヨコの
壁に貼りつつ、お仕事をしているらしい……。

 

 

 

  ■333.

 

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  ■334.
  ■335.
 写真はそんな幸せなsawaganiさんの職場の、農民車である。
ナンキンや藁束・花で飾られた農民車は周囲に溶け込みすぎて、1キロ先の農民車の残骸でも発見する
私の視力をもってしても、なかなか見出すことができなかった。近づいてみれば、いままでに見たこともないほど
手入れの行き届いたエンジンで、古いながら丁寧に拭き込まれたツヤを放っている。
 ハンドルのつくりからして、農民車としては比較的あたらしい部類とおもうが、すでに前輪の極太溝と山は
摩滅して丸ボーズ状態になっている。右側にひとつあったはずのサイドミラーもいつのまにかどっかにいっちゃった
らしい。このへんは在来の農民車とかわりがない。鳥居さんには市販のマーカーランプが取り付けられていて、
これは指示器になっているのだろうか。エンジンは見てのとおりクボタ耕運機からの流用品で、あらぬ方向に
不要なヘッドライトが光っている。

 個人的には農民車単体でも十分イトオシイが、お花や竹箒や鋤簾でドレスアップすると、ほら
こんなにもラブリー(笑)。

 sawaganiさんは、いつも職場でこんなことをして遊んでいるわけではないと思う。いやもとい、
このオブジェも遊んで作っているわけではないのだ。実はこれ、職場のイベントの展示品なのである。
sawaganiさんは兵庫県立淡路景観園芸学校という、日本でもめずらしいタイプの学校の職員だ。

そのアドレスはこっち↓
http://www.awaji.ac.jp/

 以下は私の推測だ。景観園芸学校の設立はたしか十年ほど前なので、その際に広すぎる構内の
運搬作業用として、地元にあった中古の農民車を適当にみつくろって購入したのがこの車体ではないだろうか。

 この農民車は高島ファームカーAT85型の特徴がある(続・法農民車考を参照)。鳥居のマーカーランプ、
深く幅広い前輪のタイヤ溝などが証。その製作元の高島鉄工はすでになくなって久しい。
ギリギリ高島鉄工が残っていたとしても、新品で購入したままのタイヤがここまで摩滅するには、相当に
動き回らなければならない。実際に農家で使われるこの型のタイヤが、これほど減っているのも
あまり見ないので、やはり中古車とみるのが妥当だろう。たとえ中古でもこんなに使い込まれれば
タイヤも本望というものである。お見事、景観園芸学校。
新車購入でここまで使い込んでいれば、ますますすごいぞ、景観園芸学校。


 私はsawaganiさんにお招きにあずかり、一家そろってそのイベント、「アルファ祭」に参加させて
もらってきたのだ。「アルファ祭」は、いわば大学でいう毎年恒例の学園祭。もちろん参加無料で自由見学できる。
三人の子供達をはじめ、私も嫁も十分楽しんできたが、残念にもちょっとした行き違いがあって
sawaganiさんご本人と会うことができなかった。その点がかえすがえすも無念である。
 一連の写真ではお客さんが少ない感じだが、私が人のいない一瞬を狙って写したせいでもあるし、
なんせ景観園芸学校は広大なのだ。この地点もそのほんの一部分。他では人がいっぱいだった。

 若い奥さん連中も地元女子高生たちも農民車に夢中……ってワケではなさそうなのが物悲しいが、
まあ農民車というのは本来そうしたもんなのである。

 そういう農民車をアルファ祭にひっぱりだしてくれた張本人は、なにをかくそうsawaganiさん。
学校では普通のトラクターも使っているのにあえて避け、地元で生まれた農作業車を大勢の皆さんに
ハレの舞台でお披露目してくださったのだ。装飾の実作業は生徒さんの手によるもので、名付けて
「アートフラワー農民車」。
 こんな超個性的な展示、そんじょそこらの学園祭では見られないだろう。

 この近野新、その心意気に感謝の気持ちでいっぱいだ。

 最後に、この企画でかたわらに掲示されたsawaganiさんの解説文を載せて締めくくりとしたい。
 ■336.
                              農民車とは?

 農作物の運搬などを目的として、淡路島の鉄工所でハンドメイドで作られる自動車である。エンジンは農機や乗用車の
ものが流用される。淡路島ではごくふつうに見られるが、島外ではめったにみることのない島独自の自動車文化である。
 車体は装飾部品や快適装備の一切が省略されており、また、島の鉄工所の設備でも製造可能な簡素な設計となって
いる。このため、自動車としての必要最小限の部品からなるきわめてシンプルな形状を呈する。この形状は、1880年代の
世界初の自動車(ダイムラー・マイバッハ)や、日本初の自動車とされる山羽式蒸気自動車(明治37年)にも相通ずるテイ
ストである。



                            アートフラワー農民車

 淡路景観園芸学校の庭を管理するのに活躍している農民車を、本校専門課程9期生の高橋俊介が装飾した。農民車の
装飾展示はおそらく史上初と思われる。
 名作「おもいひでぽろぽろ」の1シーンを彷彿とさせる稲藁を満載した荷台には、秋のイメージをやきつけるコスモスの花
などが飾られた。季節柄ハロウィンを意識してカボチャがあしらわれたが、予算の関係からオレンジ色のが買えなかった
あたりにそこはかとなく哀愁がただよう。農具は雰囲気をもりあげるために置いてあるが、結果、風景にとけこみすぎること
に成功した。限りなく作為の感じられない自然な作風をじっくりとあじわっていただきたい。
※なお、同時に近野の絵の販売や紹介もしていただきましたが、ここでは手前味噌でもあるので掲載はひかえました。
 その売上げはすべて展示物の制作費に繰り入れられています。ありがとうございました。
さてこのページを更新したあと、すぐ掲示板におたけさんから反応がありました。
おたけさんの観察眼の鋭さには毎回感服いたします。
例によって、近野がまとめさせてもらって再掲載します。


淡路園芸学校の農民車ですね。
やはり坂道が多いので、前輪タイヤが猛烈に摩耗してますね。
前輪にはブレーキ装置が付いています(写真からわかりますね)。
また、搭載エンジンはクボタのER-50型で、これは昭和50年代にタイ等に輸出する製品を
まとめて仕入れたものらしいです。
それゆえ、排気管横の製品銘盤に打刻された製品名は、すべて英語になってると思います。
あと気になったのは、このエンジンは元々温暖地域仕様なので、
寒冷地域用の補助装置(始動用グロー装置)がついていません。
ただインテーク側に燃料を注入するキャップが付いているだけですね。
掛かりにくいエンジンなので、日立製のセルダイナモを取り付けて、
ベルトを介してフライホイールを回し、始動させているのでしょう。
この方式はY社のNS-65CG型エンジンにも搭載されていて、ここのホームページ内でも
その姿はよく見かけます。
最近ではこのセルダイナモも生産が終了してしまい、車と同じようなセルモーターに変わっているようです。
また、エンジン自体もものすごく機種を少なくして、大きなエンジンは海外で生産したものが
日本に出回っている場合もあるらしいですが。
横型水冷ジーゼルエンジンで今現在生産しているのは、Y社、K社、M社の3社程度ですね。



そして、sawaganiさんからも、追加情報がありました。
上記のおたけさんの書き込みに対する反応も並べて記載させて
いただきます。


 前輪の摩耗はたしかにすごいです。
おたけさんのおっしゃるとおり、野島常磐は坂道だらけ、学校の中も坂道だらけ。
そんな場所でほぼ毎日動いていることがはげしい摩耗の原因でしょうか。
この農民車は、景観園芸学校の庭
(アルファ・ガーデンという名で一般公開されている)の
管理のために、月曜から金曜まで、朝から晩まで走り回っているのです。
あたらしく植える花苗、ひっこ抜いた雑草や花ガラ、肥料や農機具。時には強風で倒れた樹木など、
さまざまなものを積んで、日々大活躍をしています。


>おたけさんへ
 エンジンについての詳細な情報、面白いです。
 確かにあのエンジンには、タイ語と思しき文字で書かれた注意書きのステッカーが貼ってあります。
 「掛かりにくいエンジン」は、本当にそうらしいですね。
この農民車を使っている職員の方がときどきそのように言っています。
始動時のバッテリーへの負担が大きいのか、あるいは移動距離が常に短いために充電が不十分なのか、
しょっちゅうクランクでエンジンをかけています、
ていうか、いまどき手回しクランクでエンジンを始動している風景をみることが衝撃です。
2CVみたいですね。



sawaganiさんのご報告によると、近野の想像よりも
はるかに稼働時間の長い農民車のようで、恐れ入ります。
実際、考えてみれば普通の農民車は年に一ヶ月もないであろう農繁期の
わずかな間しか動いていません。
やはりそれだとタイヤの減りも少ないでしょう。それに
土の道だとよけいに減り方がすくないのかもしれません。
しかしクランクで始動するのは逆に憧れますねー。
まあ毎日やってりゃイヤになるでしょうが(笑)。