■354.fwr4×4/990525/三原町  



農民車を愛する全国の、いや全世界の皆様もかなり驚嘆されたに違いない
車体のお出ましである。

いや撮影した本人も肝を潰した代物で、いまだかつて類を見ないほど
個性的で、未来までもを感じさせるデザインは、確実に
fam4×2のbQで紹介した超小型農民車を凌駕している。
 そしてまた、かつて灘の国観光さん、またsawaganiさんからご報告いただいた、
小松農民車(派生型bWおよび12)を数段単純化させ、
あるいはソ連の傑作戦車T-34の傾斜装甲をも髣髴とさせる、
興奮さめやらぬ外観なのである。

そう、まさに傾斜と単純の掛け合わさった面構成は、絶妙の一語に尽きる。
ステアリング軸を保護する鉄板(ラジオアンテナが!)、前輪のタイヤハウス、
そしてその間の、おそらく車体下にあるデフケースかミッションケースを
かわすために作られた運転席床の出っ張りにまで、傾斜面が
つけられている。この出っ張りに傾斜はつけなくともいいはずだが、
あえて足元の安全を高めるための丁寧さであろう。
ハンドル位置は、気のせいか市販車のそれよりも外側にあるような
気もするが、それゆえ運転席左側におおきな空間が生まれて、
より個性を醸し出している。
その前端にある四角い直立した柱が謎だが、ひょっとするとライトを
取り付けるための支持架だったのかもしれない。
そのライトは、なんとバンパー(?)の下にぶら下がっているのだ。
やや垂れすぎなのは、たまたま何かが当たって下を向いたのか、、
それともわざと真下付近を照らすためなのか。
こんなところに最小限のライトを一個付ける、そのセンスがもうワンダーすぎて
息を呑むほどだ。
バンパーの左端が微妙なラインを造っているのは、ここはぶつかって
曲がっただけだろう。
また、銀の塗装もなかなか他では見られない。それもなぜか
全体が銀ではなく、割合からすればほんの一部分なのだ。
なぜ一般的な車体上部と足回り部分との塗りわけではないのだろう。
椅子の背もたれは黒、という固定観念でもあったのだろうか。
そして、これ以上は単純化できないだろうと思われる
鳥居さん(荷台全部の垂直な板)。
まるである種の室内インテリアのようだ。



■355.




後ろから見ると、まず目につくのは、荷台にある妙な蓋のような出っ張りだ。
これはエンジンの位置を少しでも高くして最低地上高を稼ごうという理由でできたと
思われるが、これではちょっと荷物が置きにくい。
しかし荷台をまったく平らにしてしまうと、そのうち
fwr4×2のbSのように扉がでこぼこになり、開かなくなったり
閉じなくなったりしてしまう。
荷物の置きやすさをとるか、エンジンが地面に引っかかりにくくするのをとるか。
この農民車の持ち主は後者をとったのだろう。

なお、このエンジン搭載形式農民車ではよく見られることだが、
後輪には緩衝装置、すなわちバネがない。車台と同じ鉄骨を
二本、重ねた下にデフホーシングをくっつけてあるようだ。
タイヤと荷台がこれほど接していては、上下動は危険なのだろうか。
あるいは、不整地で荷物を積んで走ると、バネはかえって
振幅を増加させて荷崩れをおこしやすいとも聞く。
その両方の理由なのかもしれない。

車体中央部には、ちいさな気化器がついている。
どうもこの気化器というやつは、なるべく前のほうに配置しないといけない
ものらしく、fwr型では長いホースをつないで後部のエンジンまで空気を送っている
農民車がほとんである。



■356.




重ねられたようなエンジンの上の出っ張りは、まったく動かないように
荷台と点付け溶接されている。その中央部にごく小さなほんとうの蓋があって、
不必要と思えるようなバネ付きの留め金で強固にとまっている。
この蓋の小ささでは、給油以外には使い道がなさそうだ。
エンジンを吊り下げる鉄骨も頑丈そのものだし、
仮にエンジンを積み替えたり整備のために降ろそうとすると、
大変難儀なことになる。
そこまで使い込むことは考えなかったのだろうか…。
そして最も不可思議な特徴は、普通の農民車ならば必ずある、ロープを引っ掛けるための
金具、というかフックがまったくない、という点なのだ。
鳥居さんにも荷台下の周囲にも、まったくない。
荷物を積み、運ぶために生まれた農民車の存在理由を
ひっくりかえすかのようだ。
そして荷台の周囲には、アオリ板(荷物の落下防止のための側板)を
差し込むためのコの字断面の鋼材を、わざわざ削り取った痕跡がある。
玉葱のコンテナを積むことなど金輪際ない、と断言されているようだ。
ひょっとするとこれは、農薬のタンクと動力噴霧器を運ぶことに
特化されている特殊車両として分類されるべき
農民車なのかもしれない。

そっちにするべきだったかなあ……。




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fwr4×4
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