工夫もなにも一切なし。かなり面食らった方がおおいと思う。
私も、はっきりいってかなりの衝撃だった。
考えうる限りの単純な車として、頭で想像できる極限の状態を実物で見せられると、
なかなかどうしておったまげるものだ。
まるで子供が考えたオモチャの車のようだが、これでちゃんと大人が考えたであろう
立派な手作りの自動車なのだ。
もちろん作っただけでなく、きちんと農作業に使われている。
この場合、正面はヘッドライトとウィンカーが着いているし、視界は良好そのものだし、
実用上の問題はまったくなにもないのだ。



 ■301.


運転席はごらんのとおり、しっかり軽トラックである。
そう、この車は派生型のNo.7と同じく、車台に市販車をそのまま使っているのだ。
この運転席の柄を見ただけで、その車種を言い当てられる方は当然いると思うが、
残念ながら私にはその知識がない。
まあとにかく軽トラそのものだ。
タイヤハウスというかサイドシルというか、その部分には
取り外されたドアとの防水ゴムまで着いたままだ。
これは吹きさらしの運転席になっているので当然必要ないが、
外すのが面倒なのか、それとも外すと塗装まで剥がれるのか、
そのままになっている。



 ■302.


形式名はfam4×?としたが、一連の写真にはエンジンが写っていない。
たしか運転席のシートを持ち上げると、黄色い空冷エンジンが
納まっていたような記憶があるのだ。
そして4×?の?は、ひょっとするとリアルタイム4WD等の
切り替え装置が備わっているのかもしれない、という配慮からである。
そうした肝心な部分の写真を撮っておけばいいものを、撮っていない。
これは当時の私がこの農民車を
「簡単な改造で済ませた農民車ともいえないような車」として
不当にも軽く扱ったためだ。
いまから考えると大きなマチガイで、この簡単さこそが車という乗り物を
安く、末永く利用する有効な手段であるのに間違いない。
私の浅はかな思考を反省し、
所有者の物持ちのよさに敬意を表したい。
それと、まっ平らな正面は一枚板ではなく、どうやら左側のほうで
切り継いでいる。
これがたとえば整備上、この部分を取り外すことができるように
考慮された結果なのか、それとも単にこの大きさの鉄板しか手元になかったのか、
そのへんは不明である。


 ■303.


ところで、おかしなことにこの車の運転席と助手席は高さが違っている。
元々こうなのか、改造してこうなったのかわからないが、
市販車でこういう状態の軽トラックを見たことがない。
小型のオート三輪などは椅子の形状も高さも違っているし、
そういえばミゼットUも二人乗りは形も高さも違う。
あるいは、昔はこんな車も多くあったのかもしれない。
荷台のほうも、新規に造り替えている。
トラックの荷台というのは例に漏れず酷使されるので、
ここが壊れたのを機会に農民車として改装されたのかもしれない。

ところで、写真300.と302.には、不思議な光の文様が映りこんでいる。
別に恨みを残して死んだ人などではなく、
白黒フィルムに現像液が残っていたのだろう。
プリントにはなにも映ってなかったが、フィルムは時間がたつと影響がでる。
現像は手作業なので、
一度に大量の同時プリントを頼むとこうなるときがあるのだ。
極めてきれいな現像をしてくれる腕のいい写真屋であったが、
惜しいことにすでに故人で、店も閉めている。


平成23年の8月21日に、「白いあかべこ」さんという方から
掲示板にこの農民車についての書き込みがありました。大変詳しい考察で、
この農民車の改造前をお教えいただいたので、ここに転載させていただきます。

はじめまして、耕運機とトレーラーを農家でもないのに所有する者です。
〜中略〜
ステアリングとシートの形状から、ダイハツのハイゼットトラックであると思われます。
ライトの形状から平成元年ころの550cc最終型のS81Pという形式でしょう。
また運転席と助手席の間にトランスファーレバーがあることから
2駆⇔4駆の切り替え式であると考えられます。
左右のシートの高さ違いは農民車への改造の際
背の高い汎用エンジンを載せる為にかさ上げしたのかもしれません。
もともとはガソリン水冷3気筒のEB型エンジンを80°に寝かして搭載していました。
〜後略〜


白いあかべこさん、ハイセットの詳細をありがとうございます。
ご指摘のトランスファーレバー、私はてっきりシートベルトのキャッチだと思ってました(恥)。
シートの高低差も、空冷ロビンエンジンは寝かすと燃料供給に支障が
出そうですから(重力落下式タンクだと思う)、十分ありうる理由ですね。
近野のとぼしい知識を埋めてくださる情報がありましたら、
またご連絡下さい。

さて、上記の追加からしばらくして、「農民車史」のおたけさんから、
「燃料タンクは電磁ポンプを使えば傾けても大丈夫です」
というご注意と、
「この車はエンジンもハイゼットのままで、車体のガワだけ新規に作り直したものではないか?」
との指摘がありました。
農業用空冷エンジンを使うにはプーリーを使用したベルトで動力伝達
しなければいけませんが、そのスペースがあるとは思えないし、
加速時の反応も鈍くなるという趣旨の理由からでした。
正直いって、私が見た黄色いロビンエンジンは記憶違いかもしれません。
ただ、いまや現物がをどこで撮影したか、またいまもまだ現存するのかなど、
これを確かめる術がない状況です。
おたけさんのご意見は、可能性があるご指摘として追記させていただきます。
ありがとうございました。

▼派生型(特殊車両):fam4×?(簡

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■300.fam4×4(ユ 950116.三原町地頭方