徒労に賭ける
2021年
― その1 ―
210403-1
昨年からもはや三か月以上の歳月が過ぎてしまいました。
光陰矢の如し、別にボーっとしていたわけではありません。
今年は薪づくりの時期にあたっていて、休みの日だけでなく、早出で早く帰宅できる日は
平日でも薪割りをして、薪棚に薪を積み、休日は親戚に木を倒しに行き、玉切りにして
軽トラックで家まで運んでおりました。
これをやっておかないと来季の暖房用燃料が枯渇してしまいます。
我が家の大事な仕事です。
それがようやく一段落したので、やっと四月に入って農民車を触ることができました。
自動車にとって最も大切な場所、ブレーキであります。
ちゃんと機能するんだろうか、これ?
210403-2
写真が斜めで申し訳ありませんが、ちょっと事情がありまして…。
ファインダーが覗けない位置にあるので、片手で適当に裏側を撮りました。
したがってピンボケだったりして。
申し訳ありません。
とにかく、写真も撮りにくければ錆も落としにくい。逆U字に曲がったブレーキパイプの
下にあるナットをはずせば分解できそうですが、はずそうかどうか悩みます。
うーん、どうしよう。
……やってみるか……。
いや、やめとこうか。
210403-3
問題を先送りして、ワイヤーブラシで錆を取れるだけ取りましたらば、
なんか綺麗になってきました。まあ手作業でやりにくい場所なので、
いままでのように銀色に光るまで磨けませんでしたが、これはしょうがありませんね。
とにかく肝心のナットは元気そうで、回してもねじ切れそうな気配なし。
では外してみましょう!
クレ556を吹いておきます。
で、よく考えたら手前でピンボケになってるブレーキパイプも外して
おかないと。これにもクレ556噴射。
200113-4
ブレーキパイプなんて外したことがないので、適当に回していきましたが、
パイプを固定する10ミリナットを外しても取れず、バンジョーボルト側の17ミリを
回しても、穴からは抜けてくれません。そこで他のナットを全部ゆるめて
円盤をゴリゴリ動かすと、おお、ちゃんと揺れてくれるぞ。
でも、どうやら写真210403-1にある中心部の白い円盤で留まっているようで、
これを外す方法がわかりません。
ネットで調べたらいいんでしょうが、時間がもったいないので取り外し作業を
中止する決断をしました。
優柔不断で情けないですが、早くこの農民車を動かせるようにしたいのです。不安定な土台に
不安定なウマに載せっぱなしというのは、地震が来た時を考えると本気で怖くなります。
別にレストアのコンクールに出品するでもなし、動かせるようになってから
時間ができれば本格的に整備しよう、としておきます。
人間、妥協も必要です。
すべてのネジを締め直します。
おのれ、貴重な時間を……。
210403-5
これは表側のブレーキシリンダー。判別しづらいですが、大文字の
R
と、例のトヨタマークがレリーフされています。
Rは左右の意味かと思いましたが、反対側のもう一本もまったく同じ「R」の品物でした。
かなり錆ているようですが、ゴムもしっかりしていて、機能的には問題なさそうです。
210403-6
やれるだけのことはやったつもりで、錆止めを塗ります。
なんか最近の車でよく見るホイールから覗く赤いブレーキキャリパー
みたいになりましたが、実物を見るとだいぶ雑に塗っています。
今回、初めてブレーキクリーナーという長いスプレーを買ってきて、
全体に吹き付けてから塗装したのですが、油汚れはあまりついていなかったので、
思ったよりも劇的にはきれいになりませんでした。
やっぱり錆には効かなかったか。
話は変わりますが、このたびの写真はとあるゴミ捨て場で拾ってきた(爆笑)
キャノンのコンパクトデジカメで撮りました。
そのカメラは電池が膨らんでソケットから出せなくなって捨てられたようで、
電池はラジオペンチで引っこ抜いたら取れました。
ネットで対応するリチウムイオン電池と充電器を買ってみたら
ちゃんと使えたので、拾い物ではありました。
解像度が低くて縦横比も以前より真四角に近い、
それになぜか色味も変な場合がありますね。
上の写真など、錆止めはもっとエンジ色に近いです。
ま、ネットでは写真が軽くなるし、自分専用のデジカメで撮影できて、
汚れても傷がついても嫁に気兼ねがありません。
記録用として、これで充分です。
200113-7
さて、以前との違いがわかりますでしょうか。
実はこの年末年始に時ならぬ大嵐が吹き荒れまして、前部の屋根が吹き飛んでしまう
悲劇があったのです。雨は降ってなかったのが不幸中の幸いで、
正月早々で暴風雨の中、ブルーシートをどうにかくくりつけました。
飛んでしまった屋根は、もともと中古品の塩ビ波板だったので、
地面に落ちた衝撃でコナゴナ。
もはや再起不能だったので、新しく作り直して、骨組みを台形にして空気抵抗の減少を
はかり、これまた拾ってきたプラスチック段ボールの分厚いやつを屋根材としました。
でもそれがブルーシートみたいな青色で目障りだったので、わざわざ白塗装に。
農民車に塗る予定と同じアイボリーです。
この写真ではちゃんと塗れてますが、実は剝がれやすくてすでにハゲチョロです。
プライマーなんてもったいなくて使えませんので。
二本の柱も、蝶番で繋げたので、設置と撤去がだいぶ簡便になりました。
それと、脇にあった大きなクヌギの木も切り倒して薪になりました。
これで、農民車に大木が倒れこむこともありません。
カブトムシたちのいい餌場だったのですが、また新たに芽を吹き出すことでしょう。
農民車の再生とは直接関係のない話ですが、
これも三か月の空白の理由なのです。
三度目の春が平年よりもものすごく早く、感覚では
ひと月も早くやってきました…。
― その2 ―
本降りの雨が一日中続いた翌日、植物動物はどんどん活動を促進しております。
現役農民車も玉葱の防除や早稲の収穫に活躍しておりますが、
旧式農民車の復活もしなければならず、撮影して歩く時間がなかなか取れません。
もっと休みがほしいものです。
210430-1
前回に引き続き、後輪のホイール内部の錆取りが今日の作業。
まえと同じ絵面で申し訳ありませんが、仕方ないです。
心なしか、右輪よりも錆がひどいような気もしますが、ブレーキドラムをはずした
当初は、こちらの左輪のほうが錆び方がマシだったような……。
下にある溜池の湿気があがってきている影響かなあ。
210430-2
表側の錆をワイヤーブラシで落としていると、片方のブレーキシリンダーが四つのボルトで固定されて
いるのに気がつきました。裏側を見ると、矢印のサイズ12のボルトがそうです。
そして、二つのシリンダーを外すと、同時にブレーキパッドごとそっくり外すことが
できるんでは?と推測しました。だいぶせせこましい場所ですが、なんとかメガネレンチが
かかったので、外してみることに。パッドとシリンダーがバラバラになってもとに戻らなくなる
危険性もありますが、外した方が綺麗に錆もとれましょう。
210430-3
これは、同じボルトを上から見た所。
写真では明るいですが、なんせ外側の日差しが強烈な分、内側の暗い場所は真っ暗になって
何も見えません。手探りでボルト頭にメガネレンチをかけて、金槌でそっと叩きながらゆるめていきます。
三つのボルトは順調にゆるめることができたのですが、矢印のボルトだけが
手応えがアヤシイ。
よく確認したいのですけど、どうしても見えない。
んんん~?これはひょっとして…
「じー。老眼だから、見えませーん」
「はっはっはっは、仕方がないの。ではハズキのルーペをかけよう」
「ハズキのルーペー」
♪ぱぱぱ ぽぽぽぱ、ぽーぱ、ぽーぱ♪
いつまでも遊んでいる場合じゃない。
老眼の味方、ハズキルーペは高価ですが、私は例によって某ゴミ捨て場で入手。
モロボシダンばりに装着していざボルトを見るも、ハズキルーペといえども
焦点距離があります。シャーシーとそれを支持する木製のウマ、それに
板バネとブレーキとの空間は、まさに頭が入るのがやっと。
その距離はハズキルーペには近いのか遠いのかも不明なほど頭を動かせず、
結局ピンボケのままでした。
が、前回から使っている、これまた拾ったコンデジ・キャノンパワーショットA3300ISが、思いがけず役立ちました。
手のひらに収まるカメラは、背面の液晶画面で画角を確認できました。
撮影した210430-3をみてみると、
ブレーキパイプの隙間にある問題のボルトは、ナメて角が銀色になっています。
10のスパナでは入らない。12はナメる、ということは11か。
だがしかし、ここで問題発生。手持ちのスパナには11がありません。
メガネは11があったのですが、ここはブレーキのバンジョーボルトが邪魔してハメることが
できないのです。モンキーレンチもプライヤーも分厚すぎて隙間に入らず、
パイプを外そうとそのボルトをゆるめてみると、なんとパイプごと回りだして
ちぎれそうになる始末。
もうどうにもできません。ブレーキ周りを外すのはやめにしました。
ああ、またない時間を無駄にした……。
それにしても、なんでこのボルトだけ小さいんだ?
210430-4
こころみに、となりのシリンダー取付ボルトを見てみましょう。
えー、小さいのかどうかわかりませんが……。
では、反対側の右輪の取付ボルトを見てみましょう。
210430-5
うーむ、小さいような……どうだろう……。
「わからん!」
左で12だった位置のボルトには 4 の浮き彫りがありますが、
肝心なボルトはどうなのか確認できません。
どうも錆止めをむやみに塗りたくりすぎました。こっちも手探りで塗ったもんで…。
それよか、12のスパナを試してみればよかったんですね。
四つのボルトの間にはバンジョーボルトとグリスニップルがありますが、その基部は
まるく盛り上がっています。よく見ると、4のボルトのほうが
離れています。ということは、バンジョーのほうも同じにしたら、その盛り上がりに干渉して
しまうのかな……いや、それならば、四つすべてを11のボルトにすべきではなかろうか。
左輪の一個だけ小さかったボルトは、単純に12のボルトが一個足りなくて、
11のボルトを使ったんだろうか。
とにかく、今回はもう外しませんが、将来外すことは考慮に入れて
11のスパナは手に入れなければなりません。
どっかに捨ててありますように。
210430-6
こいつは左輪の前側ブレーキシリンダー。
上のゴム部品は劣化して切れる寸前。
全部で八つあることになるこのゴム、切れそうなのはこの一個だけでした。
この状態でブレーキが動かない、ということでもなさそうで、
いわゆるゴムブーツでしょうか。埃除けの。かつて、製廃のステアリングブーツを
自己融着テープでぐるぐる巻きにして補強する、という荒業が
「オールドタイマー」誌で紹介されていたことがあります。
でも、その荒業をこのシリンダーで試すには、やはり四つのボルトを外さない事には。
11のスパナかあ……。
210430-7
こちらはブレーキパッドの縁。
なにか文字があるのを見つけました。
NBK DON242-FF
と読めます。
ちょっと検索してみたのですが、この品番ではパッドそのものは出てきませんでした。
ヤフオクのAE86中古パーツ情報が挙がっていたりしましたが、これがハチロクに
関係あるはずもないです。
それにしても、文字の上が欠けているので、パッドがだいぶすり減っているのかも。
交換したほうがいいのでしょうが、まだそんなことをする段階でもありません。
とりあえず、引き取ったときはブレーキが効いていたし。
210430-8
ああ、この写真はピントが合っていなかった…。
なにも取り外すことなく、錆だけ取って水性錆止めを塗布。
塗料が余ったので、ホイールの後ろ、荷台横部分の錆を取って塗ることに。
この荷台が増設してあることは以前に紹介しましたが、増設前の後端には
むこう側まで筒抜けの角鋼材が溶接してあります。
それなのに、むこう側は光も見えません。
竹を突っ込んでみると、端から端まで埃と籾殻が充満しておりました。
ネズミの巣でもあったのかなあ。
210430-9
冬の間に切り倒したクヌギは、新芽が伸びてきました。
まだ二・三本しかありませんが、そのうち十本くらい生えてくるはず。
切り倒す前の根がそのままなので、おそろしいほど養分を吸い上げ、生命力に
溢れた勢いを見せてくれます。
たのしみだなあ。
農民車も出来上がりを想像して、
作業をたのしみたいものです。
いつの日になるやら。
― その3 ―
また三か月も農民車を離れてしまいました。
なんとも面目ないかぎりですが、五月に肺炎をおこして入院したりしてまして、
その後の体力低下や通院などで休みがつぶれ、なんやかんやで
今日に至ります。
体調はもどったのですが、今度は夏の暑さがたまらん状態。
言い訳ばかりで申し訳がない。
210723-1
今回の作業時間は一時間と設定しました。
この折ってしまったブレーキパイプを外すのです。
凸型に曲げてあるのがそうですが、どうやら鉄製のため錆がまわったようです。
久しく錆取りと錆止め塗りばっかりだったので、
新鮮な気分になりそうですが、体感はすごく蒸し暑く、いつもの綿のツナギは
とても着る気になれません。
半袖のTシャツでも汗だくになるに決まってるので、手早くやります。
ま、こんなのプロなら五分で外すでしょうが。
210723-2
パイプはネジ付きのナットで締めてあるのですが、一個目のこのナットで
いきなしアクシデント。10のはずなんですが、普通のスパナだと
ナメてしまいました。これはまずい、とブレーキパイプ用の箱型スパナに交代。
あるんなら最初から専用品を使えばよかったんですが、倉庫から運んできた
スパナの箱の中にはなかったのです。
どこにあるかといえば、錆取りと錆止め用具一式を入れた箱に入ってました。
気を取り直してその専用品で回したんですが……
やっぱりナメる!
210723-3
一度ナメはじめると、同じ工具ではどうやっても回ってくれません。
かといって、9のスパナではまったく入らない。場所が狭いのでプライヤーも
力が入らず、やはりナメてしまいます。
ここは一度深呼吸して落ち着くべく、もう一方のナットを外すことに。
さいわい、こっちは簡単に外れてくれました。
やはり10で合っていたようですが、さてナメたナットをどうやって外しましょう。
210723-4
そんなことを考えていると、なにやらポタポタ液体の落ちる音が。
見ると、折れたパイプからブレーキフルードが垂れ始めました。
ストローを水に入れて上の穴を指で抑えると、引き上げても下の穴からは水が漏れませんが、
指を離すとたちまち漏れ始める、あれです。
反対側から空気が入ったんで、大気圧で押されたんですね。
下に置いてあった後輪タイヤに垂れましたが、どうにかなってしまうんだろうか。
まあどうせボロボロのタイヤだからなあ…。
とりあえず、ウエスで拭いてはおきました。
210723-5
折れたパイプはもう再起不能なので、漏れ箇所からもぎとってしまいました。
これでメガネレンチが使えるので、ひょっとするとナメずにナットが回ってくれるかも。
ちゃんと外せたほうの先端をみると銀色で、やはり真鍮ではなかったようです。
安物ですがフレア加工の工具も買ってあるので、なんとかこのラッパを
作ることができるよう祈ります。
さすがにフレア工具はどこにも落ちていません。
それとパイプベンダーがまだないんだけど、やっぱり必要なんだろうか。
これもタダでは入手できそうにないなあ。
210723-6
この強情なナット、メガネレンチでもナメてしまいました。
9のメガネを金槌で叩きこもうとしたんですが、今度は狭すぎてそれも無理。
業を煮やして、切断砥石とディスクサンダーで面を削り取り、9.5くらいにサイズダウン
させました。もう無茶苦茶ですが、回らないんだからしょうがない。
狭いし暗いし、面堂終太郎が泣き出すような場所での電動切削工具は
大変に危険で、こんなのやりたくはなかったんですが、
なんせ回ってくれないのです。
210723-7
9のメガネを叩きこんだら、気持ちのいいくらいガタがない状態で、
簡単に回ってくれました。ひょっとしてネジ部分でちぎれやしないかと気をもんだものですが、
問題があったのはナット部分だけだったようです。
しかしですよ、回ったはいいですが、今度はメガネが外れなくなってしまったのです。
ご存知のとおり、メガネレンチは外したりハメたりしないと一回転しない場合が多いです。
この場合も半回転もしないうちに障害物に当たってしまい、どうにもなりません。
無理矢理ハメたメガネは人力ではびくともせず、ハメたときと同様に
金槌で反対方向に叩こうとしてもその隙間がないときた。
梃子を使おうにも作用点が小さくてうまくいきません。
ああもう、こんなことしてると予定の一時間はかるく過ぎていて、
汗だく状態になってきました。
万事休す、もはやこのネジナットを切ってしまうしかありません。
またしても切断砥石の出番がきました。
ネジ部分は切り残すことが出来そうですし、プライヤーでも掴んで回せそうです。
なんて手強い奴なんだ。
210723-8
恐るべし切断砥石とディスクサンダー!
ネジだけ切ったと思っていたら、まさかメガネレンチまで一緒に削っていたとは、
「このリハクの目をもってしても見抜けなかった!」
でもまあ、この犠牲によってなんとかネジナットを抜き取ることができました。
9のメガネレンチも、だましだまし使うことはできるでしょう、この詰め物をとれば……。
210723-9
手こずりに手こずった甲斐あって、なんとか外れてくれたのですが、
このネジナットのサイズは規格がちゃんとあるのか不安です。
むかしの品物は基準が変わっていたりするので…。
不安と言えば、こういう穴には泥バチが巣をこしらえるので、そこらへんに
落ちていた枯れ枝で栓をして、作業終了。
パイプを一本外すのに一時間半もかかってしまいました、汗まみれで。
水分補給して昼飯を食べます。
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