徒労に賭ける

2024年


― その1 ―






240106-1




秋にはなんとかタイヤを装着して、車体をウマからおろす…という
昨年中にやる目標をたてたにもかかわらず、
なんやかんやで新年をむかえてしまいました。
皆様、今年もよいお年を……って、
時候の挨拶をしている場合ではありません。
なんとレストアも七年目に突入。モンローの映画を
思い出してしまう……って、そんな話をしている
場合でもありません。タイヤを装着する前段階の、
ブレーキドラムが装着できないという状態で作業がとまったまま
なのです。

膠着状況をおさらいしましょう。
要因は明確で、上の写真で1.にあたるネジが固着して
回らないため、それに付随するブレーキパッドが広がったまま調節できず、
ドラムが入らないのです。
ネジ1.を回すためには歯車2.を回さないといけないのですが、
どうしても回ってくれません……。






240106-2




幸い、左右一対の歯車のうち、歯車3.は回ってくれました(前回参照)。
3.は上側のパッドを上下させ、4.は下側のパッドを上下させます。
つまり、両方とも回せれば両パッドの間隔を調節でき、
ブレーキドラムも簡単に嵌められるはずなのです。

元整備士の知人によれば、両パッド間隔を縮めてドラムを嵌め、
内側からスリット7.(後述)にマイナスドライバーを差し込み、
いったん両パッドが動かなくなるまで広がるよう、歯車を回します。
そこから両方の歯車を四本分だけパッドが縮まるように回すと、
ブレーキ調節が完了するそうです。

…ここまでは、前回までに判明した修理法です。
パッド調節歯車さえ回ってくれたら、左右ドラムなど半時間もかからず
装着できるはずなのですが、
もうかれこれ三か月も悪戦苦闘。試行錯誤が続いてます。






240106-3




まるで病気が判明したらこわいので医者に行かない
昭和の頑固親父のごとく、
「回らなかったら八方塞がりでレストア放棄」
…という最悪な事態が怖くていじいじしてたんですが、
いじいじし続けてもレストア放棄したのと同じ。
ほったらかしておくわけにもいかず、観測史上最高の暖冬のうちに、
冬のレストアを地味に再開。

ちょっとピンボケの写真240106-3は、目下問題の固着調節歯車に
パイププライヤーをあてがってみたところ。
プライヤーはこの写真で手前に回せば効果的に使えるはずですが、
そうすると5.の縁と接触してしまい、どうもうまくいきません。
では反対方向に、というのもハブが当たってうまくいきません。
おまけに、プライヤーが歯車用のノッチ板に引っかかって
まっすぐ歯車に合わせられず、力がうまく伝わらない。
しからばノッチ板を外そうとしても、
固定ネジ6.はなぜか鍋ネジ。こいつを回そうとマイナスドライバーを
あてがうと、溝が広すぎて一番でかいマイナスでも合いません。
そのうえ鍋ネジ強固に固着して、ノッチ板は外せず。
六角ボルトだったら回しやすかったのに~。

こんな状態で五回ほど思いっきりパイププライヤーを回して
みましたが、歯車を滑るばっかりで一向に固着はとけないのです。
歯車の材質が脆いのか近野の力がすごいのか、
だんだん歯車が銀色にチビてきたような…。
いや、そうではなくて近野の力が中途半端なだけですが。







240106-4




書き文字が見づらくて申し訳ありません。
スリット7.にパイププライヤーの持ち手にあったマイナスドライバーを
差し込んだところです。手前に動かすと板バネがだんだん邪魔になり、
奥へ動かすと余計に邪魔なものがいっぱいあるのが
おわかりでしょうか。
つまり、そもそもこのブレーキ調節関連は設計ミスなんでは…?
固着した場合のことまで考えてないんでしょうね。
これだけでも調節しづらいのに、前回は固着に負けてマイナスドライバーの
先端が曲がっちゃいました。仮にスリットで調節できるとすれば、
まずは表側から歯車を回せるようになってから。
きっと、本来はもっと短いドライバーで事足りるのでしょう。







240106-5




このどうにもならない現実を前に、ちょっと冷静に
考えてみました。
知人元整備士によると、ドラムを入れてからパッドを最大限ひろげ、
そこから歯車の歯四つ分=両歯車で八つ分のパッドを縮めれば位置とのこと。
ということは、下側パッドはブレーキが効いていた状態で固着し、
調節できていないので、まだ正規位置のはずです。
だから下側パッドが固着して動かせなくとも
結局は正しい位置なのです。下側パッドが最大位置から歯車四つ分だけ
縮んでいる(上がっている)、ということです。

とすると、上側パッドだけでも
最大限に縮められればなんとかドラムは入るのでは…?
そして、ドラムさえ入れば、上側パッド用歯車だけの調節で
正しいパッド位置に戻せるのでは。

光明が見えてきたので、とにかく動くほうの歯車を調節します。
実はどっちに回せばパッドが縮んでくれるのかあいまいだったの
ですが、今回は慎重に確認したところ、歯車を掴んだプライヤーを
ハブの方向に回せばパッドは縮んでいく、ということが判明。
歯車に雄ネジがついていたのではなく、
中心に雌ネジが切られていたのです。
歯車自体は、いくら回しても上下動しません。
思いっきり歯車を回してみると、雄ネジに繋がった上側パッドが下がって(縮んで)、
アイボリーの塗料が塗れていない錆部分が
覗いてきました。

ここで上記写真240106-5を見てください。
8.の位置で、パッドとプレートの間に隙間があるのが
わかりますが、この間隔は三ミリほどあります。パッドの端っこは
接着しきれずに浮いているのです。パッド自体は
わずかながら柔軟性があって曲がすので、ここにドラム内側を
ひっかけてパッドを縮める具合に嵌めこめば、なんとかなるのかも。








240106-6




ほらほら、なんとかかんとか、だましだましドラムが
はまってくれました!
…といっても嵌め合いはキツキツ状態で、まだホイール固定ボルトも
完全に通せていませんが、
ここで時間切れ。
嫁がいないので、冬休みの息子の昼飯準備です。

小一時間の作業でしたが、ここまでくれば焦ることもないのです。
もともと、ドラムをはずす際もなかなかで、ゴムハンマーはおろか
木片をあてがってでかい金槌でどつく、などという
荒業ではずしたドラム。
ほんの少しの角度差や位置ずれでスムーズに
入らないのです。ボルトと穴の位置もズレ気味ですよね。
ここで焦ってパッドを剥がしたりしたく
ありません。そんなことになったらまたオオゴトに……
あっ!
ボロボロのダストブーツがわりに
グリスを塗っとくのを忘れてた!
くっそう、焦ってないつもりが焦ってたのかあっ!

切りのいいところまでやってから終わりたいのですが、
後日に頭をじゅうぶん冷やしてからやり直します。
それによく考えてみればもう一個、右後輪のドラムが
残っているのです。あっちの歯車は回るんだろうか…。

不安のおおい一年になりそうです。







― その2 ―








240212-1





さて前回、ダストブーツがわりにグリスを塗っておくのを
忘れたままブレーキドラムをはめてしまったので、今回はドラムを
はずすところから作業を再開しました。
そんで最後の最後に、もう一度だけ右側のブレーキシュー調節歯車を
回すことに挑戦。渾身の力をこめて全体重を背中方向にかけ、
両足を突っ張ると…なんと回り始めました!

上の写真は、その記念すべき一枚。
歯車の上部に銀色と錆色がある円筒部がおわかりでしょうか。
錆色部分はノッチの板が邪魔で、ワイヤーブラシを
かけられなかった部分で、見事に磨ける位置まで回すことができました。
一度回ってしまえば、あとはさほど力まずに回せます。
いや~、一時はどうなることかと思いましたが、やっと前に進めます。







240212-2





計画通りダストブーツがわりにグリスを塗布。
と、その前にパーツ&ブレーキクリーナーで全体を清掃。
ドラム内側にも同クリーナーを噴射してからグリスアップして、
おもむろにドラムを被せると、難なくはまってくれました。
あれほど取り外しと取り付けに難儀していたドラムが、
こんなにも簡単にはめられるとは……。

ここでちょっとしたことに気がつきました。
ひょっとして、なかなかドラムが動かなかったのは、ブレーキパッドと
ドラム内側が汚くてゴジゴジになってたからでは…?
ブレーキクリーナーを吹き付けた後では、
それくらいにストレスなくスポスポと脱着できてしまうのです。

「パッド面には油をつけてはならない」

という意識が強すぎたのか、クリーナーを吹いてなかったんですが、
「パーツ&ブレーキクリーナー」だから、ブレーキに吹いてもよかったんだ、
と気がつき、今回はブレーキ面をキレイにしたわけですが…
ひょっとしたら、ブレーキシューの調節すらしなくてもよかった?
……う~む、まあブレーキ調節の知識が増えただけでも
儲けもんかなあ……。
いや、やはり努力と時間を無駄に使ってしまったのか…。







240212-3




済んでしまったことをあれこれ考えるのはやめにして、
右側後輪に取り掛かります。こっちの右側歯車は難なく回って
くれましたが、左側はとてつもなく頑固者。上部の銀色はきれいに
出ていたのでコイツは案外でした。一ヶ所だけきちんと整備
できないのは無念ではありますが、ブレーキクリーナーで
清掃すると、こちらもドラムははまってくれたので、
もうこの歯車は回さないことに。







240212-4





ドラムを取り付けたあとは、裏側のスリットからマイナスドライバーを差し込み、
ブレーキシューを再調節します。前にも書いた通り、
一旦ドラムが動かなくなるまでシューを広げ、そこから歯車の歯四つ分
縮めます。その作業をマイナスドライバーでするわけですが、
狭苦しい場所で上のでかいドライバーではかえって使いづらく、
下のちょっと小型のドライバーで歯車調整。
おっ、うまく回っているかな…と思って力を入れ続けたら、
ものの見事に先端が折れ曲がっただけでした。

「それでも男ですか、軟弱者!」

す、すみませんセイラさん!材質がヤワすぎました!
こんなゴミドライバーでも何かの役に立つかもしれないので、
怒らないでください。ええと、たとえば
狭い場所にあるゴミを耳かきのごとくひっかきだすとか……。

「そんな…不良みたいな口の利き方、おやめなさい!」

話が噛み合ってませんよセイラさん。






240212-5





マイナスドライバーはそうそう予備がないのですが、
仕方なく大きいのをあてがってみると、やはりどうにもでかすぎ。
とくに右側はデフホーシングに加えてブレーキホースまで邪魔してきます。
ホースは柔軟性があるのでいいとはいえ、古いものなので
グネグネしてて裂けたりしても大変です。
やっぱり短かくて、先端の大きいマイナスが必須。
どうしたものか…。
ところで、1.の矢印は、歯車と格闘してるうちに、どういうわけか
動いてくれたノッチ板(わかりにくい)。でもいまさら動いてくれても
とくにうれしくありませんけど。







240212-6





コロンブスの卵よろしく、発想を変えて短いマイナスを造ることにしました。
そうです、短く切断してしまえばよいのです。
ネジを回すわけではないので、取っ手の太さは不必要。
けどまあ、梃子の要領では短すぎるのもうまくないので、
現物合わせで長さを判定。
ディスクグラインダーで切りましたが、たしかこのドライバーも以前に
歯車を回したとき先端が曲がった覚えがありまして、
切断時もかなり材質が柔らかい印象でした。
プラスチック部分のバリは小刀で成型。
上のドライバーは上物で、人の力では曲がりませんが、
見た目ではどっちがイイのかわからないんだよな。






240212-7





おお、可動角が十度ほどから九十度まで拡大!
こんな簡単な加工で会心の出来です。
ブレーキ調整もセオリー通りに歯四つ分縮めましたら、
若干シューが擂れている音がしますが、もともと端部が
剥がれかけのパッドなので、そんなもんかと思います。
さあ、いよいよタイヤを取り付けるか、と意気込みましたが、
タイヤに空気を入れとくのをすっかり忘れてました。
タイヤは四本とも、指で押すとへこむ状態で、だいぶ危険。
コンプレッサーは家から十キロほど離れた某所で
借りるので、タイヤ四本は車で運びます。
その時間はなかったので、本日の作業は終了…。

しかしやっと難所を通過することができたので、
気分はかなりよろしいです。
さあ、次回はいよいよ

「ガンダム大地に立つ!」

か?






― その3 ―








240217-1





写真の前輪タイヤは使用限界をとうに超えててボロボロ。
こんなタイヤはどんな悪徳業者でも使わないでしょうが、
私は自己責任で使わせてもらいます。
ま、いまのところ一般道で普通に走るつもりはありませんし、
応急タイヤということで…。
空気を充填すると破裂するかと危惧していましたが、ほつれたような
繊維はまだ元気なのが内部にあるようで、
チューブそのものは見えません。

それと、空気バルブについている妙な部品は、ふつうに回すと外れて、
一般的なバルブがでてきました。
これはたぶん空気抜きの器具ではないでしょうか。
タイヤをホイールから外すときに、これを
逆さにしてバルブに押し込むと、タイヤの空気が抜けていくのです。
ドライバーのような工具でも代用できますが…
なんでこんなものがついてたんだろ?







240217-2





通常、タイヤを交換するときは、タイヤを手で動かせるくらいに
ジャッキアップすればいいのですが、車体下面を整備するため、
だいぶ高い位置にタイヤを持ち上げないと
ホイール用のボルトに引っかかりません。これよりでかいタイヤだと、
かなり苦労するところでした。
ホイールの穴とボルトはそのままだと芯がずれてますが、
ナットは座面がテーパーになってるので、六個のナットを均等に
締め込んでいけばズレは解消していきます。
テーパー座面には、念のためグリスを塗布。







240217-3






法面の一部を掘り下げてこしらえた駐車場なので、
作業性は最悪…という写真にしたかったのですが、どうも
コンデジの広角レンズでは広く見えてしまうなあ…とそんなことは
どうでもいいのですが、右側後輪を装着していると、途中で
車輪が空転しなくなりました。おかしい、左側後輪はタイヤを取り付けても
回ってるのに…?
一旦タイヤを外して、ドラムブレーキを手で回すと回るのです。
なんだこりゃ。
ひょっとすると、片輪が溝に落ち込んだ時、浮いてるほうの
タイヤだけ動き出すデフの特性でこうなってるのか…。
でもいまは両側ともタイヤは浮いてるし。






240217-4






もしかするとエンジンから動かせばデフは普通に動くようになるかも。
…と考えて、エンジンを久しぶりに動かしてみることに。
つらつら考えるに、三年は始動してない気がします。
まあ、この手のディーゼルエンジンは十年くらいほったらかしておいても
再始動できるそうなんで、なんとかなるでしょう。
それはいいのですが、アクセルレバーを開放位置に動かそうとすると、
取り付け位置の鋼管にドロバチが巣を作っていました…
(ピンボケですみません)。
この手の巣は、ちょっとした穴を足掛かりに
そこらじゅう作ってあります。







240217-5





波動エンジンを始動させる島大介のごとく緊張しつつ、
燃料コックをおろし、アクセルを全開、デコンプを開放して
差し込んだクランクを手動で回転~!
…という作業を五回ほど繰り返し…。

「エネルギー充てん120%」
ヴヴヴヴ
「波動エンジン始動!!」
ガチ~ン
ブシュ~~ン ヒュウ~ンン
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「かからないぞ」
「あわてるな‼ もう1度やれ」
ガキーン ブシューン ウウウウーンン
「同じだ・・・・・・」

やっぱり島の操縦では波動エンジンは無理なのか?
と危ぶまれたそのとき・・・!

ズヴヴヴヴ ゴー
「‼」
グオオ
「かかった‼」
「推力上昇1千百60万トン‼ ゆくぞ」
「ヤマト発進‼」

おおおお、カッチョイイー!

…といってもこっちは短気筒の汎用ディーゼルエンジン。
マフラーから排気が出始めて始動してくれましたが、
アクセル全開のはずなのに、緊張感も切迫感もまったく感じられない
こののんびり具合(笑)。
まあ写真からは全然その雰囲気はわかりませんが、
はずみ車が回ってるのがわかりますかね…。
後輪のほうは、やはり左側だけが回ってます。
写真ではわかりませんけど。







240217-6





この機会に、ブレーキやミッションがちゃんと機能するか
確認します。
ミッションはケース内部が圧入されてたらしく、
うっかり蓋を開けたときにギヤ類が飛び出しかけて、あわてて蓋を締め直した
覚えがあるし、チェンジレバーの組み方も合ってるか不安でしたが、
シフトチェンジはちゃんとできてる様子。
アクセル全開のままバックギアに入れようとすると

「ギギギッギギギギ~」

と嫌な音までちゃんと出してくれました。
クラッチ系統はばらしてないので安心です。
フットブレーキもちゃんと効いてるようで、これも一安心です。
問題は右後輪が動かないこと。
コンデジのシャッタースピードが調節できないのですが、トップギアまで回転を
上げて、近づくと左後輪は回ってるのがわかるように
写ってくれました。プロペラシャフトも回ってますね。
なんで右だけ回んないの?







240217-7





ブレーキのマスターシリンダーは、正直言ってなんにもわからず
分解してしまいましたが、一応漏れもなくきちんと動作して
くれてるようです。
ペダルの戻りが悪いような気もしますが、まだ
手で押し下げてる状態なので、今後どうするかは
試運転しつつ考えることにします。

そんなわけで、右後輪が動かないわけはまだわかりません。
もしかすると、ひょっとして、あるいは、
地面にちゃんと降ろして、負荷をかければ動くようになるのかも?
デフってそうなの?






240217-8





とにかくわかんないので、今日は時間のある限り
ウマから降ろす作業を続けることにします。
前輪のほうはブレーキがないので、行程はホイールを
取り付けるだけで簡単。
でもセンターハブ(というのだろうか)が突出してて、せっかくの
メガネレンチが十分に使えません。こんなときはラチェットのボックスレンチが
あればいいんだけど、21のはあったかなあと探す…おお、幸運にも
一番おおきいのが21でした。
いや~、どこでタダ入手した安物ラチェットセットか忘れましたけど、
助かった。

ハブキャップのへこみはなんとか直すつもりでしたが、
ヘタに叩くと縁が曲がってハブに入らなくなりそうでやめました。
今回キャップを取り付けるときも、鍔部分を
マイナスドライバーと木槌で均等に叩き込んでいかないと
うまく嵌ってくれませんでした。






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お次は右前輪…おっと、こっちにはまたまたドロバチの巣が
あるんだった。その巣には得体のしれないブツブツが生えてますが、
中はどうなってるんだろ…。そんなことを探求してる時間もないので、
できるだけ崩れないようにこそぎ取り、そっと雨の当たらない
ところに置いときました。

こっちのハブキャップも一層ひどいですが、
キャップとしての機能はちゃんとしてるはず。
ちゃんと嵌めれば埃など絶対はいりません。







240217-10





で、ちゃんと嵌めるためにいったん外してみると、
変な針金が……おおそうだ、ここを分解したとき、
回り止めの割ピンを折ってしまったのを忘れてた。
針金は、とりあえず差し込んどいただけのもの。
ええと、どっかでタダ入手した割ピンがあったはず…
ということで、割ピンを探すのに十数分浪費。







240217-11





見えにくいですが、割ピンはこんなふうに入ります。
時間を浪費して探した割ピンは、
どうも細すぎてブカブカなのですが、まあ回り止めなので
とりあえすこれでいきます。






240217-12





すぐ終わるはずの前輪取り付け作業はまたストップ。
なくさないように借り締めしといたナットが、一個だけ緩んでくれません。
ブレーキのないハブはレンチを回そうとすると供回りするので、
どうも力が入らないのです。足と木槌を使ってなんとか
ハブを固定。ここでもクレ556が大活躍。






240217-13




やっと四輪が装着できて、どれほどの雄姿が拝めるかと
期待しましたが…うおおお、ショボい!
なぜこんなにショボい?
これもコンデジの広角レンズのせいか?
それとも近野の撮影センスのせいか?

…まあ、もともとがショボいんだし。
接地して車高が下がればもうちょっとなんとか……
いやそんな見た目より、右後輪が動かない原因を探らないと。
もしかして、サイドブレーキが効いたままなのかもしれないな、
と思い始めているのですが、どうでしょう。

エンジンはかかったものの、
まだヤマトは発進できません。次は運転席の床を組んで、
サイドブレーキを調整してみましょう。
人類滅亡の日まで、あと何日だ?







― その4 ―







240218-1





二日連続で作業するなど滅多にないことですが、
スケジュールは遅れに遅れているので、寸暇を惜しんで
少しづつでも前に進んでいかなければなりません。
今日の作業時間は一時間半ほど。
この時間で車体をおろせるほどの経験は近野にはありませんが、
次の機会には降ろすまでの手順が少なくなるでしょう。
そんなわけで、まず手始めに1.の、クラッチ板のはいる
お釜にある点検口兼廃熱口(?)の蓋というかカバーというか、
そういうのを取り付けます。
マイナス溝のはいった六角ボルトを、バネワッシャーを介して
二本締めるだけですが、こんな簡単なことでも
ボルトがなかなか入らずに苦戦。
おそらく、塗料を塗りすぎたせいでしょうね。
塗料をネジで削りながらねじ込みます。






240218-2





どうでもいいことですが、またドロバチの巣が二つも覗いてます。
昨日のエンジン試運転でこのクラッチ板は回転してたはずですが、
単気筒ディーゼルの回転速度ではなんら影響がなかったようです。
救出不能の場所なんで、
先の曲がった耳かき状マイナスドライバーで撤去。






240218-3





お次は右側フェンダーに取り掛かりますが、
これはもともと2.の位置で車台そのものと溶接してあったので、
本来はバラせないモノだったのですが、その2.の部分が
サビてボロボロだったので、切断してしまったのでした。
だからここには、せめて「受け」るための、なんらかの
出っ張りを作らないといけなかったのですが、
そんな時間もなくてすっかり忘れてました。
こちら側の側面にボルトが一本刺だけさってますが、
ほんとは二本で運転席床板と共締めです。
その二本ボルトだけではしっかり保持できないので、
このフェンダーの組み付けは、今回はパスしておくことに。
2.の「受け」をどうにか形にしてから取り付けます。






240218-4





左側フェンダーは、縞鋼板の床板と一体構造。
右側は4.の角で離れていますが、こっちは溶接されてます。
なぜに右側同様にバラせないのか理解に苦しみます。
こっちのフェンダーも、3.の部分で溶接を切断したので、「受け」を
作らないといけないのですが、
運転席の床は運転する際に必要なもので、床をつけるということは、
この場合、左側フェンダーもつけないといけません。
幸い、4.の角は全部溶接なせいか剛性もあり、さほど
グラグラしないので、このまま組みます。

5.の鉄板は、シフトレバー頂部の丸いノブを外さなくても
レバーを穴に通すことができました。







240218-5





バラしたときに残ったボルトでは本数が足りなかったので、
ジャンクボルトを探しましたが、ナットが揃ってるのは
あんまりありませんでした。しかも太すぎたり細すぎたりで、
ぜんぜん使えません。仕方ないので
バネワッシャーだけ使用。






240218-6





床板の固定は計九本。
いまボルトが入ってるのは6.7.9.10.11.12.。
8.13.14.がありませんが、もともとこの位置のがなかったわけではなく、
今回は適当な位置を締めただけです。
写真の足りない本数だけではなく、あとプーリーベルトのカバー用が
二本、それとフェンダーの「受け」の固定にも何本か必要。

ここで雨が降ってきたので作業終了。
知らない間に時間も一杯になってました。






240218-7





ジャンクボルトでは揃わないので買うことにしましたが、
どうせなら、なるたけオリジナルのボルトと同じものを買いたい。
寸法を測ると、ナットが17でボルト頭は14、
ネジピッチは1.5のようなのですが、違うような気もします。
ゲージを下端に当てると、上端ではわずかにずれて
いるんですよね。ひょっとしてインチネジ…?
ナットは鉄板や車台に溶接されてる箇所もあるので
(ない個所もある)、このボルトをなくしたり折ったりしたら大変です。
難儀だなあ…。
ちなみに長さは18ミリ。

そんでついさっき、ついでがあったのでホームセンターに
寄ってきたのですが、なんたる迂闊、太さを測るのを忘れてました。
記憶を頼りに標準のM8の20ミリボルトとナットを十本ずつ
買いましたが、太さは同じだったものの、
ネジ頭は12でした。
計った意味ないじゃん(泣)。
まったく農民車もポンコツなら持ち主もポンコツだぜ…。








― その5 ―








240302-1







「なんてこったパンナコッタ!」

昨年秋までに農民車をウマから降ろす、という目標を立てて
やってきたのに、もはや年をまたいで三月に。
いったい私はいままでなにをやっていたのでしょう。
なにか作業をするたびに現出する問題、それに頭をひねらせたはいいが、
なんとも解決策が見つからず放置したまま数週間、……の繰り返しで
いたずらに月日が流れてしまいました。
なんともはやカラスノエンドウが緑の葉を増やし始めているでは
ないですか。それなのにあいかわずの時間のなさ。
ああ、コロナで仕事が暇になった頃がなつかしい。

愚痴っていても仕方ないので、一時間ほどしか時間がありませんが、
なにかしてみます。前回は運転席の床を仮に取り付けたので、
その床にサイドブレーキを固定します。

写真240302-1は、仮止めしてある床の下。手前に向かって
伸びている1.のワイヤーがサイドブレーキの作動索になります。
ちょうど自転車のブレーキワイヤーと同じですが、ちょっと太めかな。

サイドブレーキは、正しくはパーキングブレーキだそうです。








240302-2







こちらは、そのパーキングブレーキのレバー。
上のボルトふたつは新規に使う六角レンチ穴のある中古ボルト。
分解前は、たしか溶接で固定してあったと記憶しています。

2.のボルトにはネジ部に貫通する穴が開いていて、そこに1.の
ワイヤーを通して、矢印の穴に共締めする要領だったと
記憶しています。
分解したのは何年前だったかなあ…(遠い目)。







240302-3






過去に書いた「徒労に賭ける」を読み返せばいいのですが、
時間がないので作業しながら思い出していきます。
これが危険で、組み間違えた挙句に二度手間のやり直しを
することが懸念されますが、時間がないのです。
ワイヤーをどうやって固定しているんだろう、と考えていると、
パーキングブレーキの後部に穴の開いたアングルが溶接してあるのに
気がつきました。なるほど、この穴3、にブレーキワイヤー4、を通すと、
ワイヤーの鞘がひっかかってワイヤーだけ引っ張れる、という
仕組みのようです。で、ワイヤーは穴5、にネジ2、で留めるわけだ。








240302-4







で、そのとおりにやってみましたが、ちょっと元の位置に
固定できていない模様です。
ワイヤーがちょっと折れているのがおわかりでしょうか……、
ここがつまり、分解前にネジ2.で固定されていて、跡になった
箇所ではないか、と思われます。
もうちょっとワイヤーを引っ張らないと届かないなあ…。
いまブレーキレバーはいっぱいまで下がっている状態。
ここからレバーを引っ張り上げて、いったんワイヤーを引いてみます。







240302-5







おっ、だいぶ新たな部分が顔を出してきました。
この状態でワイヤーを左手で引っ張っておいて、右手でネジ2、を
緩めてレバーを解除(下げ)し、固定位置を折れ部まで
ずらして、またネジを締めます。
ワイヤーを止めるクリップでもあればよかったんですが、
探しに行く時間もありません。








240302-6






で、パーキングブレーキがうまく効いているのかどうか…?
それがよくわかりません。
試しにエンジンをかけて後輪を回したのですが、
あいかわらず左だけ回ってて、右が動かないのです。
フットブレーキを操作しても変化なし。
パーキングブレーキは関係なかったのか…?

考えてみると、いくら昭和三十年代の農民車とはいえ、
パーキングブレーキが片輪だけ、というのも無茶な話。
接地してるのが三輪で、ブレーキがかからない場合だって
あり得ますから、やはり両後輪に効いているはずです。
ワイヤーはどうやらデファレンシャルに通じているようだし…。
となると、これは右ドラムブレーキが「引きずっている」状態
なのかもしれません。
ということで、例のスリット穴から例の切断マイナスドライバーを突っ込んで
グリグリしてみましたが、なんだか回っているのかいないのか、
いまいち手ごたえがよくわかりません。
こういう時、あの調節歯車についていたノッチ板の音が聞こえると
いいのですが、その板は歯車の固着をはずすときに
曲げちゃったままで、なんの音も聞こえません。そしてその
音が聞こえないのは歯車が回っていないせいなのかも
わかりません、ときた。

これはもはや、またもや右後輪をブレーキドラムまで外さないと
いけないようです。








240302-7






今回はそんな時間はとてもありませんので、
とりあえす仮止めした運転席の床のボルトをきっちり締めて、
ペダルの板を着けて、作業終了。
やれやれ、「お茶を濁す」とはこのことです。
ああもう、いつになったらウマから降ろせるんだ…?








― その6 ―










240316-1






このところ仕事が忙しくて(だいたい忙しいけど)、土日の連休がとれません。
休みが一日だけだと、週一でやっとく用事で時間を食って、
なおかつ臨時の用事が入ってたりして、なかなかなにもしなくていい
時間がとれなくて……いつもこんななのです。
だからって農民車を触らないでいていい状況ではなし、
ほんの少しの隙をとらえて作業をします。

今回は、この嵌めてみたものの動かなくなった右後輪を
もっかいはずして、さらに中のドラムもはずして
ブレーキシューの位置を調整すること。







240316-2





もはやタイヤをはずすごときは、難なくこなせるようになりました。
お次はこのガッチリ嵌めこまれたブレーキドラム。
ハブの隙間からはみ出た塗料が固着具合を示しています。
とりあえず、ここにはクレ556を吹いといてと…。

矢印1、を見ていただくと、スタッドボルトとドラム穴の軸線が
偏芯してるのがおわかりでしょうか。
察するに、これは上下ブレーキシューの位置が均等に
なっていないからと思われます。
-その2-で書きましたが、右後輪ブレーキの下側シューの調整歯車だけが
どうしても回ってくれなくて、上側シューだけ緩めてドラムを
嵌めたのです。だからドラムが偏芯してて、つまり下側パッドがドラムに
くっついてて、よってタイヤが回らない…と推理しました。







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で、このパッドがくっついてて偏芯したまま無理に嵌っている
ドラムがまた、なかなかはずれてくれない(涙)。
正常ならば、木槌かなんかでかるく叩けば簡単にはずれるようですが、
どんなに叩いてもびくともしてくれません。

ここで一番、セイラさんに軟弱者となじられたマイナスドライバーに
馳せ参じていただきます。こいつをドラムの隙間に入れて
こじれば……うむ!ちょっとだけ隙間が狭かったか!
いいのいいの、まだチャンスはあるぞ!






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今度は、このなんのために開いているかわからない穴の
隙間に曲がった先端を差し込み、お尻を木槌で叩きます。
まっすぐのドライバーだと入らない穴ですが、先端が曲がってると
うまく入ってくれました。

「あら、お帰りなさいカイ君」
「やあ、セイラさん!」

そう、美人にひっぱたかれたとて、めげてはいけません。
人間、生き方を変えれば相手も変わるのです。
塗装は激しく痛みますが、かまわず先端を打ち込んでいきます。







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軟弱ドライバーのおかげで、ハブ部分の固着ははずれました。
だがしかし、この段階でスタッドボルトは全部同時に
動いてくれるのですが、その範囲はドラムの穴の大きさだけ。
つまり、まだドラムはハブ以外のどこかで引っかかっているのです。
それは内部のブレーキパッドに違いありません。
軟弱ドライバーになおも頑張ってもらったところ、
やっとドラムがはずれてくれました…。








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ためしにハブをぐるぐる回したら、ちゃんと回ってくれてます。
やっぱりブレーキのパッドが原因だったのです。
ふふふ、いつになく冴えてるぜ近野。
ひとりほくそ笑みながら、調子に乗って回さなくてもいいハブをぐるぐる
回してたら、ここ数年にない驚愕に我が目を疑いました。
本当に本当に、目を疑ったのです。

こっ、これは…、
向こう側の車輪が反対方向に回っているではないかあっ!
この農民車は戦車なみに超信地旋回ができるのか!?
なぜいままで気がつかなかったんだ。
どんな高級車にもない性能を、このボロダサ農民車は
隠していたのです。

すっ、すげえっ!
うおおおおおっ!







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……なんでやねん(バシっ)!

あとで調べたのですが、ウマに乗せて両車輪を浮かせた状態では、
デファレンシャルギヤの作用で左右逆に回って当然なのだそう。
つまり右のサイドギヤが回るとピニオンギヤを介して
左のサイドギヤが逆回転する……その詳細な解説をする文章力は、
近野にはありませんが、まったくデフを考えた人はなんて
頭のいい人なんでしょう。不思議なことに、エンジンからの動力を
伝えると、左右車輪はちゃんと同方向に回転するのです。

静止画ではその様子をまったく表現できませんでしたが、
あらためてエンジンをかけ、ドライブシャフト側から動かしてみると、
回転速度は違うものの、おなじ方向に右ハブと左車輪は回ってくれています。
回転速度が違うのは、これまさにデフの作用。
車体が曲がる際は左右車輪の回転速度が変わる、
その差をデフが調整してくれるのです。
いまこの農民車の左右回転がずれているのは、
タイヤがついているかいないかで負荷が違うからでしょう。








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さて心を落ち着けて、どうしてもこの調節歯車を回して
下側ブレーキシューを内側に移動させねばなりません。
何度もやって無駄だったのですが、いつものパイプレンチで
回してみるしか方法がありませんので、無駄と知りつつ
また回します……あれっ?
ま、回る?

前に塗りたくっておいたグリスの油分が
時とともに固着したネジ部にまわってくれてたのか、
さして力を入れなくても回りました。
2.はグリスが塗れていた境界で、まえは月の裏側のように
目も指も届かなかったのです。

まあとにかく、回ってくれてよかった…。
グリスをきちんと塗り直して、裏側スリットから切り縮めたマイナスドライバーで
歯車を調節できることを確認して、再度、ドラムと車輪を組み直します。
車輪を回転させると、やや擦れる音がするけど大丈夫。
調節歯車を目いっぱい広げてから、四歯分だけ戻す。
もう一度車輪を回転……よし、ちゃんと回る。

よかったよかった。







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またエンジンをかけて、ギヤをいろいろ試してみます。
あいかわらず左右車輪の速度は違いますが、
これもブレーキパッドのわずかな摩擦差だと思われます。
パッドは端っこがめくれているので、わずかにドラムと擦れてしまうのです。
でもレストア前はちゃんと走っていたんだから、
きっと地上に降ろしてしまえば、均等に負荷がかかって
等しい回転になるのでしょう。
そう信じながら、今日はこれで終了。

この次は今度こそ降ろしたいもんです。







― その7 ―








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今日は朝から荒れ気味の天気で、いつもなら
外の用事はしないのですが、局地戦闘機「雷電」のように
配備予定が遅れに遅れているので、突貫作業に踏み切ります。
今日こそは、ウマをはずして車体を地上に降ろすのです。

「出所は聞くな」

…の大型ダルマジャッキでデフから持ち上げます。







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ジャッキアップでは、思わぬバランスのずれから車体が倒れたりするので、
大変危険。最初はゆっくりと慎重に持ち上げていきます。
「メキ」とか「パキ」とかいう不穏な音がすると、
どっかが浮いた証拠。
車台にひっついたままの板もジャッキアップされました。
ちなみに、この板と下の角材はウマとは固定されていません。
これを固定すると、板バネが邪魔で車台にウマがかからなかったのです。







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いったい何年ぶりだろう、すごくスッキリした雰囲気の荷台下ですが、
よく見ると無数の浮き錆びが出ています。
しかしこいつを根本から除去しようとすると、またジャッキアップして
全体をディスクグラインダーで錆取りしてから防錆塗装と
上塗り塗装しなければなりません。
そんなことしてたらあと五年くらいかかってしまうので、
もう先に進みます。

ウマがかかってた横桁は、予想外にサビてないなあ…と
安心しましたが、よく思い出すとここはずいぶん前に塗装していました。
しかし板が当たっていた部分は長年の密着で
錆止め塗料から剥離。
当初は地上に降ろしてから錆取りと塗装をする予定でしたが、
ジャッキアップしてある今のうちにやっつけてしまうことに。
作業空間が広いほうが楽に進むにきまってます。
ディスクサンダーとワイヤーブラシと錆止め塗料を
持ってこなくちゃ…。








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ウマの最上部に使っていた角材と板切れには、カミキリムシの幼虫が
穴を開けてました。こんなとこにまで食らいつくとは、
油断も隙もないやつらです。
食い逃げ犯は、すでに羽化してどっかに行っちゃってます。







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錆取り&錆止め塗装。
さてダルマジャッキの油圧を抜いてみるかと思ったら、まだ
手を付けてない部分を発見。
そういえば、この板バネはウマ設置前に錆をとってなかったか。
そんでウマと角材が邪魔で手が入らなかったんだっけ。
あわててディスクグラインダーとワイヤーブラシ、
&錆止め塗装。







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これはウマ最下部にある足の裏。
まんべんなくシロアリが柔らかい部分から食べ進んでいます。
奥にある高さ調整用の板はもっと食べてて、半分なくなってました。
ああ怖い怖い。








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あっと、まだ錆が残ってた!
みたびディスクグラインダー(以下略)。







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もうこんな角度で車台下を見ることもないでしょう。
そう思うとなんだか名残惜しいような気もしますが、
そんな甘っちょろいことは言ってられません。
さっさと降ろしたいのですが、
この高さでは、一気に地面まで下げることはできません。
ジャッキのピストン長さは上下動長さに全然足りないのです。
おまけにそのジャッキにも下に角材を敷いてるし…。
したがって、タイヤの下にカイモノをしながら、何回かに
分けて下げていきます。






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上げるときも下げるときも、バランスを崩して倒れないよう、
じっくりじっくり下げていきます。
焦って倒しでもしたら大惨事。
車体に体が挟まれでもしたら目も当てられません。
余ってた太めの角材とウマの上部に使ってた角材、
それにどっかで拾ってきたプラスチックのブロックに
まず仮置き。
カイモノも水平が取れてなかったりすると倒れます。
ほんとはもっと横幅のある角材がいいのですが、
ないのでしょうがありません。






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次は薄板を何枚か重ねて、水平になるように仮置き。
ジャッキ下の角材もどけます。
けどあんまり下がってないなあ…。
と、ここで、このジャッキって、降ろしたときの地面とデフの高さよりも
でかいんじゃないの?と気づきます。
おおこりゃいかん、これじゃあ最終的にジャッキが抜けなくなる、
ということで、小さめのジャッキを持ってくるべく、
また坂の上の倉庫まで往復します。
こういうことで時間がとられるんだよなあ。








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こうしたジャッキ作業を四回ほど繰り返して、ようやく後輪が接地。
運転席部分の青屋根が持ち上がって、固定用のロープが緩んでしまいました。
写真ではわかりにくいですが、前端部の支えは完全にブロックから
浮いています。この時点では、青屋根はハンドルの上に
乗っかってるだけ。だんだん風が強くなりそうなので、
グズグズしてはいられません。
こういうでかくて軽いものは、想像よりもずっと
風にあおられやすいものです。







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お次は前輪のジャッキアップですが、ジャッキポイントの
車軸真下は著しく足場が悪い。
落ち葉が溜まってる箇所は、高さが十センチほどの段差があります。
コンクリート廃材を組み合わせて造った土台なので仕方がないのです。
応急的に、適当な木片と板切れを組み合わせて、水平面を
こしらえます。






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こっちは最初から小さいほうのダルマジャッキを使用。
こいつも

「出所は聞くな」

の代物ですが、なんとか正常に機能してくれています。
作業自体は後輪のときと同じなのでもう書きませんが、
五回も仮置きを繰り返しました。
いいかげん疲れる…。

作業記録として書きますが、ジャッキダウンしたときに
上に重ねた板のスペーサ(緩衝材も兼ねる)はなかなか外れません。
ピストンの油圧が抜けるのですが、腕の力ではピストンを下げられない…つまり
板が抜けるほどの隙間をつくることができないのです。
板の隙間に梃子を入れられればいいのですが、
その隙間もない。
こういうときは、ジャッキの下にちょっと長めの板を敷いておけば、
その板の端っこを持ち上げて梃子にすることでジャッキ全体があがって、、
逆にピストンは下げる(縮める)ことができます。
足場がガタガタで、薄板で水平をとってて気付いたワザですが、
間を置くと忘れちゃうんですよね…。






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こっちのウマは、左右の柱を繋いでいた最下部の板が
完全にダメになってました。冗談ではなく、本当に
車体が倒れるところだったので、今回は作業を強行して正解でした。
このウマはコーススレッドで組み付けてあるので、
電動ドライバーでバラバラに分解して、コーススレッドは再利用します。
角材も腐ってないところはなにかしらに使えると思うので
雨に濡れないようとっときます。
腐ってるところは、そのへんにほっといたら
やがて土に還るでしょう。







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なんとか無事に着地完了。
運転席部の青屋根はちょっとブロックが高すぎたのか、
勾配が緩くなってますけど、雨風が激しくなってきたので
今日はおわりにします。固定用のロープもちょうどいい
張り具合なので、飛ばされることはないでしょう。
このあと、小雨の中で道具類の片付けをして、
ウマの残骸を後部の屋根の下に置いときます。
やっつけ仕事で作ったウマですが、考えてみると
これがあるとないとではだいぶ作業効率が違ったと思います。

君がいて本当に助かった。
ありがとう、さらばウマよ。








― その8 ―








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気がつくとクヌギの芽がどんどん緑色に膨らんできています。
もはや猶予はなりません。こうなる前にとっとと農民車を
動くようになるまで直して、さっさと屋根を越えてしまった
クヌギを切り倒してしまいたかったのですが、
予定より半年も遅れてしまいました。
嘆いていても仕方ないので、今日こそ農民車を動かすのです。
金曜日の今日は休みで、土日は出勤です。

上の写真は、エンジンから動くVベルトを保護するカバー取り付け部。
いや言い方が違った、Vベルトの回転から
足元を守るためのカバー取り付け部。1.はハンドルポストの支柱で、
2.のカバーと一緒に運転席床に溶接された3.に共締めします。
…するはずですが、どうしてもボルト穴がずれていて、ボルトが
通りません。床の縞鋼板をちょっと動かしたり、ハンドルポストを
傾けようとしたのですがダメ。よく考えてみて、取り付けの順番が
違っているのに気がつきました。左から2.3.1.の
順で重ねるとボルトは通ります。








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間違えて違うサイズのユニクロボルトを買ってしまった近野。
ボケナスな仕業を反省して記録しておきます。
5.が間違えて買った13のボルト。ここはナットが裏側に
溶接されていないので、固定できました。
4.はもともとの14のボルト。この取り付けはナットが溶接されているので、
購入したボルトは細すぎて締められません。
同様の穴はあと二か所、奥にありますが、なくても
支障はないので、とりあえずこのまま進めます。







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何年ぶりだろう、屋根がない農民車が現れました。
屋根といっても、農民車自体にくくりつけていたのですが…。
アイボリー塗装は水色よりも印象が薄いのか、
なんだか存在感が減ったような気がします。
残ったところを全部塗ったら、もっとおとなしくなるかも。

どでかい屋根は雨よけとしてはいいのですが、
取り除けるのは大変で、はやくちゃんとした屋根を
造りたいものです。






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またまた久しぶりに、荷台のアオリ板を取り付けてみます。
ガタガタなのですが、妙にタイトなところもあり、隙間もありという
ちぐはぐというか雑というか。
後部のそれは、板を増設してあります。







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そしてまたまたせんどぶり(淡路弁)に、
数メートル前進してみたのですが、路面というか地面が狭くて、
しかもガタガタなので、おっかなびっくりの運転。
乗り心地をじっくり噛みしめるゆとりもなかったのですが、
運転席が高くて囲いもなく、シートベルトもないので
ちょっと傾いただけでヒヤッとします。車体が軽くて
ショックアブソーバーがないせいか、常にフワフワしてるし、
落ち葉で横滑りするような感覚もあります。

写真の右側は登りの斜面で、左はコンクリより低くなってます。
左に脱輪したら転覆するでしょう。
幅は、タイヤ一本分くらいしか余裕がありません。
せめてもう一本分は広さがほしい…。






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こちらは運転席とエンジンのあいだを上から見た写真。
黄色いのははずみ車ですが、右側6.が足元カバーに接触スレスレ。
なのに、スレスレはその一点だけで、あとはどんどん間隔が
広くなっています。そう、エンジンそのものがまっすぐ搭載されて
いないのです。

なんちゅうこった。

こんなこと信じられませんが、Vベルトはこの程度でもちゃんと
機能して、動力をプロペラシャフトのプーリーまで伝えています。
まあ、まっすぐよりはよけいな摩擦が増えて、エネルギー効率は
下がるでしょうが、農民車ではたいした問題でもありません。
そして、まっすぐ搭載できない原因は、7.のハンドル基部がエンジンを
載せる木の架台に接触してしまっているから。
これ以上、左側を詰められないのです。
だったら、右側6.のほうを前方にずらせばいいのでは、
と思いますが、そうなるとプーリーの位置が前後に離れすぎて、
Vベルトが外れてしまうのでしょう。
回転面の角度が多少ずれるのはいいのですが、
回転面が前後にずれるのはダメみたいです。
それもありますが、木の架台が固定される車台のほうも
余裕がなくて、これ以上は前方のない最先端なので、
前にずらそうにもずらすことができないのです。
ずらせたとしてもプーリーが短くてダメだし…。

問題の木の架台もボロボロなので作り直す予定です。
その時は、7.の部分を抉って、エンジンが
まっすぐ載せられるよう工夫しようと思ってます。






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さて、ようやく伐採するクヌギの真下から移動できたので、
上部の枝からどんどん切り落としていきます。
この作業もなかなか大変なのですが、農民車とは関係ないので
省きます。しかしアクシデント発生。
十メートル以上の高さからまっすぐ落とした枝が、
倒れて後部のアオリ板に直撃。
増設してある板を固定してある角材が取れかけてますが、
幸い、釘がちょっと緩んだだけでした。
まあ、これも作り直す予定なので、壊れてもいいんですが、
壊れてほしくないところに落下するのは避けたいので、
もうちょっと移動させます。

木を切り倒すときって、想定外のところに倒れるものなのです。






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家の敷地を出たところは坂道なので、ブレーキの効きが
未確認なうちは出たくなかったのです。
しかしサイドブレーキはちゃんと効いていて、
写真ではブロックを歯止めにしてありますが、なくても
後ろにさがったりしませんでした。

この道路は、人も車もほとんど通りません。






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枝打ちの高所作業は慣れていないので、
丸一日かかってようやく枝は落とせました。
農民車の横に溜まってるのがそれ。
とんでもない量ですが、薪にするとぐんと減ります。
樹齢二十五年の木は、根元から切り倒すと、
周りの木に引っかかって、よけいに処理しにくくなるので、
上から少しずつ切っていくのがいいかと思います。

あとは残った幹を切るのですが、もう夕方五時を回ったので
農民車をもとの位置に戻します。
その前に、斜面側をタイヤ一本分だけ切削しました。
これで少しは駐車しやすくなりましたが、
後部を見るサイドミラーがないのでバックが怖い怖い。
まあ、ちょっと体を傾けたら後輪は目視できるんですが…。
そしてもっと恐ろしいことに、途中でブレーキペダルが踏み込まれたままで
上にあがってこなくなりまして、しかもクラッチを踏んでも若干の下り坂で
自然に下がっていく農民車。
このままコンクリの土台から後輪が落下か、と
心臓が止まりそうになりましたが、念のために据えてあった
コンクリートのブロックが歯止めになってくれました。

……あああああ、びっくりした。
どうもこのフットブレーキ、効いてる時と効いてない時が
あるみたいです。どういう時が効かないのか、まだよく
わからないので、原因もわかりません。
ペダルが上がってこないのは、リターンスプリングが弱っているのか。
それとも、ブレーキシリンダーの問題か。
下がり切ったペダルは、しばらくすると上がってくるのです。
踏みごたえはちゃんとあるし、ブレーキも効くんだけど、
効かない時があるのはかなり危険。
この農民車で遠出することはないでしょうが、
近所でも危険は危険なので、なんとかちゃんとした
ブレーキにします。
いよいよとなればサイドブレーキがありますけども、
こっちも効かなくなったら大変だし。

このあと、また屋根を農民車に固定して終了。
疲労困憊しました。








― その9 ―







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ここんとこ仕事が忙しくて、ろくすっぽ休みがありません。
それでも合間を見て、前回切り落としたクヌギの枝を薪にできる寸法に
切断し、荷台に積んでおきました。今日は太い枝を斧で割って、
さらに荷台に積むと、かぶせた雨除けにとどきそうになりましたが、
ちょうどいい積み荷になった感じです。
とくに車体が沈んだようにも見えないのですが、
まだまだ試運転の段階なので、これくらいで
ちょうどいいかも。

我が家の桜は日当たりが悪いせいか、あんまり
咲いてくれません。農民車のむこうにある太いのが
今回切り倒す予定のクヌギ。
枝を全部払ったので、むこうの空が明るくなりました。
こいつと、すぐそばにある樫と、もう一本、上のほうにある
椎の木(写ってない)を切るのが当面の目標。
そうすれば雨樋も落ち葉で詰まらなくなり、瓦屋根のコケも
なくなって、ついでにとなりの桜もちょっとほこってくれるかも
しれません。






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今回は積み込んだ薪を薪棚に積み直すのがメインの
作業で、農民車はほとんど手を入れてませんが、
こないだ錆止め塗装をしたところと、その周囲も浮き錆びがひどいので
余ったアイボリーを塗りました。まあ、そんなの作業ともいえないので
写真は撮ってませんが、ウマがなくなった狭さときたら…。

ところで前回、ブレーキペダルが下がったまま
戻らなくなる事件がありましたが、今日もエンジン始動前に
ためしに手で押し下げてみたら、床までべったり着いて
しまいました。五センチほど戻ったので、何回か下げていると
だんだん油圧が効いて上がってきます。それでも写真のように、
1.のブレーキは2.のクラッチと高さがそろいません。
3.のリターンスプリングが切れたのかと思いましたが、
ちゃんとしています。もっとも、なんだかこのスプリングは
もともと弱すぎるような気もします。

フットブレーキが怪しいので、当分のあいだ動かすときに
独特の操作をすることにします。

ギヤは1速に入れっぱなしで、ゆっくりゆっくり(歩くより遅く)
進み、速度を緩めたいときはクラッチを踏む、ということです。
つまり半クラッチで速度調整するのです。
どうせアクセルレバーは全開にしておかないと
すぐエンストしちゃうので、これはこれでいいのかも。
バック時も同様ですが、1速よりバックギアの
ほうがずっと速度があるので、後進はだいぶ怖いです。
サイドミラーがないから両サイドもよく見えないし。

半クラッチでの速度調整は、クラッチ板がちびるので
あんまりよくないはずですが、
エンジン式のフォークリフトではよくやる操作です。
完全に停止するときは、クラッチを切ってギヤをニュートラルにし、
サイドブレーキを引けば完了。
まあ当分は遠出するわけでなし、こういう車なんだと思えば
いいのです。
いまはクヌギを倒すのが先!

でもまあ、いつかはブレーキを直さないとな…。





240406-3






薪を積んで家まで登り、庭の奥にバックで入ります。
薪棚までは十メートルくらいですが、いつもならこの三倍は
一輪車で運ばないといけないので、だいぶん楽になりました。
昼までに終われず、昼食をとってからまた再開。
そして地面に落とした薪を拾おうとして、ふとタイヤを見ると……

おっげええ、これなにこれなに。
まさかブレーキフルードが漏れてるの…?
あああ、またよけいな難題が。
まったく楽しませてくれるぜ、この農民車はよゥ!






240406-4






アイドリング中のエンジンを見ると、なんか脇から煙が出たりしてます。
目視ではもっとはっきり見えてたんですが、4.の部分。
エンジンブロックが熱をもったので、こびりついた埃が焦げてるんじゃ
ないかと思うことにします。
排気管が錆びて穴が開いてる、なんてことは考えたくありません。

そして、後輪が濡れてる件は、もしかすると
ブレーキシリンダーに塗りたくってあるグリスが溶けて
流れ出たのかもしれません。よね?ねっ?

とにかく、いまはクヌギが先!







― その10 ―






前回、後輪からなにやら液体が垂れていた件ですが、
どうやらブレーキシリンダーからフルードが漏れているようです。
たびたび相談させていただいている
知人元整備士は、自身も農民車を持っているのですが、
長期停車後は、まったく同様の症状が出るそうです。
再始動のたびに、ブレーキパイプのなかの空気を抜き、
フルードを補充しているのですが、そんならシリンダーの
カップを交換すればいいのでは、と思うのですが、
交換しても完全には治らないらしいのです。
それはたぶん個体差によるもので、
漏れが治るか治らないかはやってみなければ
わかりません。

ま、とりあえずわが農民車のフットブレーキは
フルード漏れのため信用がならず、
効き心地はフワフワしたものになる……
という原因と症状がわかったことで、返って気が楽になりました。

もともと、そう頻繁に動かすつもりもなく、何キロも
走ることはありません。現況では伐採したクヌギと樫の
薪を二十メートルほど登った我が家の薪棚に運ぶこと。
まあ一回くらいはなんとかなるだろうと、薪は荷台に
満載状態にしました。
やれやれと運転席につこうとすると、左前輪にかなりの違和感アリ。
なんだこの嫌な感じは…?






240502-1





おお……!タイヤのサイドウォールが裂けて、
中のチューブが飛び出しつつあるじゃんか(怖)。
なんだか生き物の目ん玉と瞼みたい。

購入した時点でかなりボロボロな経年タイヤでしたが、
とうとう中身が露出するほど劣化してしまいました。
こうなると、この突出部の抑えがないので、どんどん
目玉部分が膨らんでしまい、やがて裂けてしまうでしょう。
おまけにいまは荷台に薪が満載で、よけいに
空気圧がかかってる状態。
こいつは放置できない危機です。
いつかは交換せねばならないと覚悟しつつ、先送りしてきた
タイヤ交換に踏み切ることにしました。このままでは、タイヤ
だけでなくチューブまで買う羽目になります。

この縦溝タイヤは、見た目は死ぬほど安っぽいのですが、
値段のほうは一本一万三千円もします、安いほうが。
しかも二本買って税金と送料と振込手数料を合算すると、
ほぼ三万円もするのです。
本体価格の三倍じゃん。
「ああ無情」はジャン・バルジャン。
ああなに言ってんだ、手痛い出費に血迷ったか、
しっかりしろ近野!






240502-2





前置きが長くなりすぎましたが、ゴールデンウィーク中、
絶好の行楽日和の平日休み、辛気臭いタイヤ交換を始めます。
予定時間は午前中の三時間半。
順調に進めば昼飯前には終わるだろう作業ですが、
しょっぱなから手鼻を挫かれます。
右前輪の横にある法面が邪魔で、このままではタイヤを外せません。
停車するときに寄りすぎました。
おまけに、すぐ後ろではあいかわらずモグラが活動していて、
トンネルから土を押し出しています。
あーめんどくさい。
移植後手で法面を二十センチほど削り、押し出された
土とともに取り除きます。
ここんとこ梅雨かと思うくらい雨続きだったので、
そう力はいりません。






240502-3





件のタイヤの裂け目から出たチューブは、よく見ると
ひび割れができちゃってます。このままではまずいので、
ほんとに裂けないように、念のためゴム糊でパッチを当てようかと
考えました。目印に適当なペイントマーカーで印を着けます。
なんだか青い目のウーパールーパーみたい。






240502-4





自転車のチューブタイヤはたびたびパンク修理したことが
あるのですが、こんなでかいのはどういうバルブなんだろう、と
思ってたら、ほとんど自転車のと変わりありません。
虫ゴムのかわりに、コイルバネと金属の栓みたいのがついてます。
バルブに被せてあった金具を逆に突っ込んで、左に回せば外れました。
空気圧で虫が吹っ飛んでいかないよう、手でカバー。






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農民車の駐車場ではとてもダイヤ脱着は無理なので、
自宅のちゃんとした駐車場に移動してます。
チューブ内の空気はある程度まで抜けますが、タイヤそのものの
形があるのでぺちゃんこにはなりません。
まずタイヤの内側をビードから落とさなければいけませんが、
どうも私の体重ごときでは落ちてはくれません。





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そこでリムとタイヤにタイヤレバーをこじ入れてみましたが、
劣化しきったタイヤがボリボリと削れていくだけ。
ほんとにこれがタイヤなのか?






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何十回もタイヤに全体重をかけてストンピングしていると、
だんだん理屈がわかってきました。
二本の足を広げて均等に体重をかけるより、
一本足でストンピングするほうが有効なのです。

「水鉄砲は穴が小さいほうがイキオイよく遠くまで飛ぶということだ!
わかったかスカタンッ」

ひさしぶりにシーザーの名言が脳裏に蘇ります。






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片足ストンピングを二十回ほどお見舞いしましたら、
バリッ!という音とともにタイヤがへこみました。
よくわかりませんが、ちゃんとビードは落ちてます。
しかしこの時点でもう一時間半も経過。
まだ一本目だぞ…だいぶ汗もかいてるし。






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タイヤレバー二本で、徐々に内側を外していきます。
三十年ほど前ですが、大型トラックのタイヤを人力で交換しているのを
見たことがあるので、これくらいならまあ素人一人でも
なんとかなるでしょう。
と思ってやってるんですけど、
予定時間内には終わりそうにありません。
それにしても汚い縁だなあ。






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片方のタイヤ内側がホイールから外れたところで
チューブを取り出します。
バルブ部分はどうやって外すんだろう、と思ってたら、
これも自転車と同じで、空気を抜くとホイール内部に押し入れる
ことができました。






240502-11





ウーパールーパーの上にゴム糊でパッチを当てます。
パッチは自転車の古チューブですが、
あくまで予防措置の補強ですので、あんまり
期待しないほうがいいかも。






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ホイール下側のリムは、これも上側で苦労した経験からか
割と手早くタイヤが外せました。
半分近く外せたところで、一気にタイヤレバーをハブの穴まで
突っ込んでから、梃子にして持ち上げると気持ちよく
外れてくれました。

さてあとは二本目を同じように外すだけですが、
こいつがまたどういうわけか強敵で、
一本目で学んだことが役に立ちません。
なぜか、どんなにストンピングをかましてもタイヤがへしゃげて
くれないのです。体重をかけると少しは空気が抜ける音がするのですが、
足を上げたらまた空気が入っていく音がします。
チューブがぺちゃんこになってくれないと、タイヤもぺちゃんこには
なりませんので、私の体重では片足ストンピングでも無理。
そこで、無駄と知りつつ二十キロくらいのブロックを抱えて
ストンピング!
でもやはり無駄!
それでも夢をあきらめないでやればいずれは
夢がかないますよ、と甘い歌を歌ってみたりしましたが、
物理法則には勝てないと思い知りました。

とにかく原因を探ることですが、それはタイヤ内部にあるので
外さないと見えないし……。もういっそのこと、
タイヤ屋に行ってタイヤチェンジャーにかけてもらうか?
そうすれば一瞬で勝負がつくし…。
でもこんなボロいタイヤを持ち込んで素人仕事の
尻拭いを頼むのもはずかしい。
なにより金がもったいない。
やなり夢をあきらめないで物理法則を見ないことにするか。
悩みに悩んだその時!
灰色の脳細胞にニュータイプの光がきらめいたのです。

「そういや、自動車でタイヤを踏んずけて外した話をどっかで聞いたな…」

これだ!やはり物理法則は揺るがない!






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てなわけで、駐車場からどけてあったキューブ3を後進させて、
タイヤを

「どうだ!」

とばかりに踏んづけます。
いくらなんでもこれで外れるはず、と思いきや、なんと外れず
タイヤは元通り。なっ、なんてやつだあっ!






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そんならばこいつはどうだ、とタイヤレバーをリムとタイヤの隙間に
こじ入れてから諸共に踏んづけます。
陰でわかりにくいですけど、レバーごと踏んでます。
だがしかし、またしても元通り。

ぬうう…!なんたる強敵。
でも確かにビードからは外れかけてるのが見えます。
チューブの反発力が勝っているのです。
こうなりゃ場所をちょっとずらして何回か踏めばなんとか
なるんじゃないの。






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そして三回目くらいで、やっとこさ

「バリ!」

という音で外れてくれました。
しかし、またしても膨らもうとするチューブ。こいつはうかうかと
してはおれん、向きを変えて完全に踏み外し、
裏返して同じように踏み外していきます。キューブ3の
ホイールカバーには傷がついちゃいましたが、
どうせ下取り価格なんてつかない十五年ものくらいなんで、
かまっていられません。
とにかく、どうにかこうにか
外すことができました。






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問題のチューブを外すのはほんとに骨が折れましたが、
こいつがぺちゃんこにならなかった理由がわかりました。
ホイールの一番奥まったところ全周にわたって、
錆で貼りついていたのです。
このせいでチューブは形状を保っていたので、ストンピングしても
自動車で踏んでも出た空気がまた戻るだけだったのです。

錆でゴムが鉄に貼りつくって、どういうこと?
私にもわかりませんが、渾身の力でチューブを引き抜いても、
内側には錆の粒がびっちりくっついてます。
こいつはまた、手でこすったくらいでは取れず、
ワイヤブラシでこすっても取れず、
革鋤でがりがりひっかいても簡単には取れず…。
ディスクグラインダーでは熱がチューブに悪さしそうで使えず、
結局は革鋤とワイヤブラシで少しづつ、できるだけ除去しました。

世の中には人知を超えたことがあるんですねえ…。






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時計を見るともう昼を半時間ほど過ぎてたので、あわてて
飯を食って十分ほど昼寝してから錆取り開始。
ディスクグラインダーでやっつけてやります。
手前が錆のひどいほうですが、鋲留めで組んだ旧型で、
どっかに水が入る隙間があるのかもしれません。
バルブを通す穴付近は、特に錆がひどかったので、
そこから水が浸み込んでいたのかも。

錆止め塗料と、余ってた明るいアイボリーを使い切って
やっつけ塗装完了。
タイヤの内部なんて塗ってあるだけマシってもんです。
それでも、乾かないうちにタイヤを入れると剥がれるので、
今日中の作業完了はおあずけです。






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錆が貼りついていたのはグッドイヤー製で、もう一方はブリヂストン製。
グッドイヤーは断面が円ですが、ブリヂストンは内側のほうが
やや平らに成型されていました。つまり断面が円の下のほうを
水平に切ってある感じかな。
それが錆の貼りつきと関係はないと思いますけど。

とにかく、久しぶりの肉体酷でした。
あーつかれた。








― その11 ―








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今日もまた絶好の行楽日和ではありますが、
自宅で泥くさい作業を続けております。
昨日、錆取りして錆止め塗料を塗って上塗りしておいたホイール内部。
なんだか嫌な錆びが浮いてきています。
これは錆止めが効いていないのではなく、錆の粉が
塗料に混じっていたのが表面に出てきた、と
想像することにします。
リテイクするのは時間的にも精神的にもしんどいので…。

さて、あらためてタイヤ交換を再開しましょう。







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チューブにはタイヤワックスを縫って滑りをよくしておきます。
タイヤ内側のリムに当たる部分とともに、タイヤワックスは
潤滑剤代わりになります。
あんまりギトギトするのは好きじゃないんですが、
この手の艶はすぐ引いていきます。

グッドイヤーチューブには、補修パッチが張ってありました。
専用品はきれいだなあ。






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別にタイヤマルゼンの宣伝の真似して遊んでるわけでなく、
こうやって縦にひしゃぐとホイールの外径を超える幅が
稼げます。そこですかさずリムを突っ込んで、
半分以上内側に入れちゃいます。
ほんとはタイヤレバーも使ってるんですが、カメラを持ってるので。






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片側のサイドウォールが嵌ったところで、チューブを
タイヤのほうに入れます。






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チューブのバルブとホイールの穴をきっちり合わせます。
手が入りにくいのでレバーの把手のほうを差し込んで
クリアランスをとります。






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片一方が入れば、残りのサイドウォールはわりと
簡単に入ります。あとは空気を入れるだけですが、
コンプレッサーはいつもの場所で借りるので、
次のタイヤに移行。






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ためしに両膝と両手を使って嵌めてみると、
ほとんどタイヤレバーを使わずとも入ってくれました。
しかし十分に潤滑剤を塗布し、太陽熱であっためておくなど
タイヤを柔軟にしておく必要があると思います。
冬場はタイヤが硬くて、原付スクーターの
タイヤ交換も苦労した覚えがあります。






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ここでミス発覚。
ホイールの裏側から両サイドウォールを入れちゃうと、
バルブを穴に通すのが不可能なほど狭くなることが判明。
バルブ穴のある表側から手を入れるためにリムとタイヤの
隙間を広げようとすると、チューブがホイール内壁とタイヤに
挟まってどうにも動かせなくなります。
表側からサイドウォールの片方だけ入れて、
バルブ位置を合わせてから
残りを入れるのが正解のようです。
やり直すべく、表側のサイドウォールを一回外してから、
あらためてバルブ位置を正して入れ直しました。

準備万端に整ったタイヤとホイールを積んでコンプレッサーを
借りに行くと、偶然にも以前にタイヤ屋に勤めていたという
人に出くわしました。おまけにその人も
農民車を使っているらしく、タイヤ&ホイールセットを抱えて
空気を入れに来た近野を見て、

「えっ、自分で入れたんですか⁉」

と呆れるやら驚くやら。
一番知りたかった空気圧や、バルブの構造、空気が抜けかけた
ときの応急手当、キャップの重要性やチューブレスとの
バルブの違い、「2313」というレリーフの意味…
2023年の13週目に製造…など、いろいろと教えていただきました。
バルブにキャップがないのを見て、

「着けとかないと泥が詰まったら面倒です」

と、手持ちのをいただいてしまいました。
なんていい人でしょう。
そんな彼の農民車は後輪がダブルタイヤで、パンクしてたのに
気付かないまま乗り続けて、結局四本全部買い替えて
大出費になったそうです。

ホイールと値が合えば普通車の安いタイヤでも
装着できますが、やはりトラクターやトラックは
タイヤにかかる荷重がすごいので、普通車用は
使わないほうがいいようです。同じタイヤでも
ちゃんと用途別に作り分けられているのですね。

ちなみに、このトラクター用のタイヤは4プライという強度で、
空気圧はその半分と覚えればいいそうです。

「あんまり使わないんなら、2.5でもOK」

ということなので、2.5キロを充填。
正しい値だと安心感があってよろしいですねえ。






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家に帰って早速装着。
おほう、新品タイヤと正しい空気圧は違うぜ。
やはりマットブラックがあると引き締まる、
まるで生まれ変わったかのようだ。






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雨除けをとっぱらってもう一枚。
ううむ、荷台が重いので後部が下がってるけど、
そこがまたかっこいいぞ。






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ほらほら、どう撮ってもいいじゃん!
ちなみに新品タイヤの感触は感動的。
ただでさえ軽かったハンドルが、小指一本でも回せます。
接地面は三本の線だもんなあ。

まだたくさん直さないといけないところがありますが、
フットブレーキの不調をのぞいて急がなければならない
箇所はもうありませんので、
ちょっと肩の荷が降りました。

今回の薪運搬は三十メートルほどを二往復しましたが、
フットブレーキは使わずに終えました。
この農民車の場合、アクセルレバーがハンドルポストに
あるので、たとえばブレーキだけ踏んでもクラッチが繋がってると
車体は進もうとします。
クラッチとブレーキは共に極端なほど右に寄っていて、
両足で踏むと体が斜めになったところに慣性が効いて、
体が運転席の前にもんどりうって落ちそうになります。
そうでなくても、たとえば
右手でアクセルレバーを緩め、左手でハンドルを保持し、
左足でクラッチを踏み、右足でブレーキを踏む、というのは
マニュアル車に乗れる私でも不慣れで難しい操作。
それなら、常に一速ギアでゆっくり走り、速度をなお緩めるときは
クラッチ操作だけで緩めて、ブレーキはサイドブレーキ。
このほうがだいぶんと楽に運転できるのです。

ですので、後輪ブレーキの本格修理はまたしばらくは
おあずけにしておきます。
どっちかというと、はやく小屋組みを作って
動かすごとに脱着をしなきゃならない雨除けから
卒業したいものです。
取り外すたんびにボロになっていくし。







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どこから見てもいいかんじ。
このあと、そのめんどくさい雨除けを十五分ほどかけて
車体に固定しました。
今日もまた日が暮れます。





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